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障害児の【移行支援】 ガイドライン&調査から見える実態をわかりやすく解説

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児童発達支援ガイドラインに示されている「移行支援」

インクルージョンの推進の側面においても、期待されている支援です。

この記事ではガイドライン内容に触れながら移行支援の具体的な取り組みについてや、調査から見える実態について解説します。

こどもの可能性を広げていくために、私たちができる「移行支援」について理解を深めましょう。

児童発達ガイドライン全体についての解説は↓こちらをご覧ください。

令和6年7月改訂児童発達支援ガイドラインについては↓こちらで解説。合わせてご覧ください。

【家族支援】については↓こちらで解説しています。合わせてご覧ください。

児童発達支援ガイドラインに移行支援は以下のように記載されています。

イ 移行支援 
地域社会で生活する平等の権利の享受と、地域社会への参加・包容 (インクルージョン)の考え方に立ち、障害の有無にかかわらず、全ての子どもが共に成長できるよう、障害のある子どもに対する「移行支援」を行うことで、可能な限り、地域の保育、教育等の支援を受けられるようしていくとともに、同年代の子どもとの仲間作りを図っていくことが必要である。また、児童発達支援においては、障害のある子どもの発達の状況や家族の意向をアセスメントし、地域において保育・教育等を受けられるように保育所等への支援を行う「後方支援」の役割が求められている。 

(ア)ねらい
a 保育所等への配慮された移行支援 
b 移行先の保育所等との連携(支援内容等の共有や支援方法の伝達) 
c 移行先の保育所等への支援と支援体制の構築 
d 同年代の子どもとの仲間作り 

(イ)支援内容  
a 具体的な移行を想定した子どもの発達の評価 
b 合理的配慮を含めた移行に当たっての環境の評価 
c 具体的な移行先との調整 
d 家族への情報提供や移行先の見学調整 
e 移行先との援助方針や支援内容等の共有、支援方法の伝達 
f 子どもの情報・親の意向等についての移行先への伝達 
g 併行通園の場合は、利用日数や時間等の調整 
h 移行先の受け入れ体制づくりへの協力 
i 相談支援等による移行先ヘの支援 
j 地域の保育所等や子育て支援サークルとの交流

引用:児童発達支援ガイドライン
しょーなり
しょーなり

放デイガイドラインには、学校や保育所との連携や放課後児童クラブとの併行利用についての記載はありましたが、「移行支援」という記載はありません。

移行支援についてガイドラインの内容を踏まえ、大きく4つのステップに整理してみました。

step1 こどもと家族のニーズの確認とアセスメント

まずは、こどもと家族のニーズを確認することが大切です。

支援者がこどもにとって、家族にとって「こうしたほうがいい」という想いを持っていたとしても、決断をするのはこどもであり家族です

移行することで見込まれる成長や環境の変化に伴う影響等を丁寧に説明しながら、移行についてニーズの確認をしましょう。

そして、それらの説明をするために必要なことはアセスメントです。

こどものことをしっかりと理解していなければ、想定も出来なければ移行のために何が必要かを考えることが出来ません。

フォーマル、インフォーマルそれぞれを合わせてアセスメントでこどもの状態像をしっかりとつかむことが移行支援には必要です。

step2 移行先との連携

移行のニーズが確認出来たら、次は移行先との連携です。

移行先のことを知らずに移行支援は出来ません。

移行先はどんな環境なのか、こどもの人数や、先生の人数など移行先のことを把握して、こどもの移行に必要なことを検討します。

ここで気を付けるべきは、移行先にも様々な思いと状況があることを理解することです。

支援者 Aさん
支援者 Aさん

「こどもと家族のニーズはこうだ!」

支援者 Bさん
支援者 Bさん

「こどもが安心して通うためにはこういう環境と関わりが大切なんだ!」

しょーなり
しょーなり

こどものためにそれらを伝えていくことは大切ですが、移行先の事情も一切考えず要求をすることは、移行を遠ざけてしまう結果になりかねません。

移行先と丁寧なやり取りをしながら、移行の計画を立てることが大切です。

こども・家族・移行先それぞれにとって良い結果になることを目指して支援しましょう。

step3 こどものペースに合わせた移行

移行すると言っても、「じゃあ、明日から毎日移行先に通ってね」といった急な進め方ではこどもが急な変化に対応できないことも充分に想定されます。

また、移行先もこどもの受け入れについて強い不安を感じてしまいます。

こどもの特性に応じた対応になりますが、

  • 慣れている支援員や家族と移行先の見学をする
  • 移行先に慣れるため、短い時間過ごす

といった段階的な進め方が必要な場合も多いです。

また、段階的な取り組みを進めていく中でこどもの反応や家族・移行先の意見を聞きながら進め方を微調整していくことが大切です。

障害児支援の切れ目のない縦横連携については↓こちらをご覧ください。

計画通りに進めることを優先するのではなく、状態に応じて検討しながら臨機応変に進めましょう。

step4 フォローアップ

移行が出来たとしてもそこで終わりではありません。

こどもの成長や、環境への慣れによって想定されなかった事態が後から起こることも往々にしてあります。

移行先との連携のネットワークは切らすことなく、情報を交換しながら一緒に考えて、こどもが安心して健やかに育つことが出来る地域をみんなで作っていきましょう。

障害児の移行支援についてどのように進んでいるのでしょうか?

厚労省の事業で、令和5年3月に出された障害児の保育所等への移行支援の実態把握に係る調査研究報告書の内容から見てみましょう。

出典:厚生労働省令和4年度障害者総合福祉推進事業 障害児の保育所等への移行支援の実態把握に係る調査研究報告書

図表18を見ると、併行通園を実施している子どもの数は自治体が運営主体の事業所は、0人が23.5%と一番少なく、5人以上が53%と一番大きな数値となっており、併行通園を行う子どもの割合が比較的多いことが見て取れます。

出典:厚生労働省令和4年度障害者総合福祉推進事業 障害児の保育所等への移行支援の実態把握に係る調査研究報告書

年度中に事業所を退所して移行したこどもの数を見ると、やはり年度内に移行したケースは全体的に少ないことがわかります。

しかしその中でも、自治体が運営主体の事業所は比較的移行している傾向があります。

出典:厚生労働省令和4年度障害者総合福祉推進事業 障害児の保育所等への移行支援の実態把握に係る調査研究報告書

併行通園等の形態を見ると、一番多いのは最初に併行通園先に行ってから、事業所に通う形となっています。その次が、日を分けて通園先と事業所を利用する形ですね。

出典:厚生労働省令和4年度障害者総合福祉推進事業 障害児の保育所等への移行支援の実態把握に係る調査研究報告書

移行支援を実施するきっかけについてはやはり保護者からの希望が一番多いです。

出典:厚生労働省令和4年度障害者総合福祉推進事業 障害児の保育所等への移行支援の実態把握に係る調査研究報告書

ニーズの把握や、移行支援の積極的な推進については、やはり自治体が運営主体の事業所が積極的に推進している傾向が見られます。

報告書には他にも多くの調査内容が記載されています。是非ご覧ください。

しょーなり
しょーなり

いくつかの数値を紹介しましたが、やはり経営的に安定している自治体が運営する事業所で移行支援を進めやすい面があるかと思います。

最初にガイドライン内容を見ていただいたように、児童発達支援事業には以下の通り「後方支援」の役割が求められています。

児童発達支援においては、障害のある子どもの発達の状況や家族の意向をアセスメントし、地域において保育・教育等を受けられるように保育所等への支援を行う「後方支援」の役割が求められている。
引用:児童発達支援ガイドライン

それは放課後等デイサービスにおいても同様です。

(2)放課後等デイサービスの基本的役割 
○共生社会の実現に向けた後方支援 
放課後等デイサービスの提供に当たっては、子どもの地域社会への参加・包容(インクルージョン)を進めるため、他の子どもも含めた集団の中での育ちをできるだけ保障する視点が求められるものであり、放課後等デイサービス事業所においては、放課後児童クラブや児童館等の一般的な子育て支援施策を、専門的な知識・経験に基づきバックアップする「後方支援」としての位置づけも踏まえつつ、必要に応じて放課後児童クラブ等との連携を図りながら、適切な事業運営を行うことが求められる。さらに、一般的な子育て支援施策を利用している障害のある子どもに対して、保育所等訪問支援を積極的に実施する等、地域の障害児支援の専門機関としてふさわしい事業展開が期待されている。
引用:放課後等デイサービスガイドライン

目の前のこどもの育ちを支援するために、障害児支援だけでは充分ではありません。

障害児支援も子育て支援の一部です。

児童発達支援や放課後等デイサービスが担っている子育て施策への「後方支援」の役割を忘れずに保育や教育との連携を深めていきましょう。

移行支援について、ガイドライン内容を整理した具体的な取り組み4つのステップと、調査から見える実態を解説しました。

移行支援には、ニーズの確認や移行先との連携を丁寧に行うことが必要です。

まずは地域にある社会資源を理解すること、そしてこどもと家族のニーズを確認するところから始めてみましょう。

こどもと子育てを支援する私たちが、決してこどもの未来を決めつけることなく、可能性を広げていけるように。

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