障害児支援は眼の前のこどもに対する支援だけではありません。
家族のあり方は、こどもの成長に大きな影響を及ぼすことは言うまでもないと思います。
こどもが健やかに育つために、家族も安心して子育てに向かい合えることが大切です。
この記事では児童発達支援ガイドラインの内容に触れながら、家族支援のポイントを4つにまとめてご紹介していきたいと思います。
児童発達支援ガイドラインについては
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令和6年7月改訂
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【本人支援】の5領域については
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1.家族支援の必要性
児童発達支援や放課後等デイサービスを利用している時間に「学べること」・「安心して過ごせること」は大切なことですが、通っている時間だけでは足りません。
当たり前のことですが、こどもは家庭の中で育ちます。
児童期に生活の中心となる家庭を除いて、こどもの成長を考えることはできません。
こどもの支援をするということは、こどもが育つ家庭全体も含め支援をしていくことが必要だと支援者は理解することが大切です。
2.ガイドラインに示されている家族支援
ここで児童発達ガイドラインに記載されている内容を確認してみましょう。
第2章 児童発達支援の提供すべき支援
1 児童発達支援の内容
(2)家族支援
ア ねらい
(ア)家族からの相談に対する適切な助言やアタッチメント形成(愛着行動)等の支援 (イ)家庭の子育て環境の整備
(ウ)関係者・関係機関との連携による支援
イ 支援内容
(ア)子どもに関する情報の提供と定期的な支援調整
(イ)子育て上の課題の聞きとりと必要な助言
(ウ)子どもの発達上の課題についての気づきの促しとその後の支援
(エ)子どもを支援する輪を広げるための橋渡し
(オ)相談支援専門員との定期的な支援会議や支援計画の調整
(カ)関係者・関係機関の連携による支援体制の構築
(キ)家族支援プログラム(ペアレント・トレーニング等)の実施
(ク)心理的カウンセリングの実施
(ケ)家族の組織化と定期的な面会
(コ)兄弟姉妹等の支援
ウ 支援に当たっての配慮事項
〇 家族支援は、家族が安心して子育てを行うことができるよう、さまざまな家族の負担を軽減していくための物理的及び心理的支援等を行うことである。
〇 家族支援は、大きなストレスや負担にさらされている母親が中心となる場合が多いが、父親や兄弟姉妹、さらには祖父母など、家族全体を支援していく観点が必要である。
〇 家族が子どもの障害 の特性等を理解していくための支援となる が、理解のプロセス及び態様は、それぞれの家族で異なることを理解することが重要である。
〇 特に、子どもの障害の特性等の理解の前段階として、「気づき」 の支援も重要な家族支援の内容であり、個別性に配慮して慎重に行うことが大切である。
〇 家族支援において明らかとなってくる虐待(ネグレクトを含む) の疑いや心理カウンセリングの必要性など、専門的な支援が必要な場合は、適切な対応が求められる。
〇 家族支援は、必要に応じて、障害児相談支援事業所、他の児童発達支援センターや児童発達支援事業所、居宅介護(ホームヘルプ) や短期入所(ショートステイ)等を実施する障害福祉サービス事業所、発達障害者支援センター、児童相談所、専門医療機関、保健所 等と緊密な連携を行って実施することが必要である。
引用:児童発達支援ガイドライン
第5章には保護者との関わりについての記載もされています。
第5章 児童発達支援の提供体制
6 保護者との関わり
職員は、子どもや保護者の満足感、安心感を高めるために、提供する支援の内容を保護者とともに考える姿勢を持ち、子どもや保護者に対する丁寧な説明を常に心がけ、子どもや保護者の気持ちに寄り添えるように積極的なコミュニケーションを図る必要がある。
(1)保護者との連携
○ 職員は、日頃から子どもの状況を保護者と伝え合い、子どもの発達の状況や課題について共通理解を持つことが重要である。このため、医療的ケアの情報や介助の方法、適切な姿勢、気になることがあった場合の情報等について、連絡ノート等を通じて保護者と共有することが必要である。また、必要に応じて、家庭内での養育等についてペアレント・トレーニング等を活用しながら、子どもの育ちを支える力をつけられるよう支援したり、環境整備等の支援を行ったりすることが必要である。
○ 設置者・管理者は、送迎時の対応について、事前に保護者と調整していくことが必要である。また、施設内でのトラブルや子どもの病気・事故の際の連絡体制について、事前に保護者と調整し、その内容について職員間で周知徹底しておく必要がある。
○ 設置者・管理者は、職員が行う保護者への連絡や支援について、随時報告を受けることや記録の確認等により、把握・管理することが必要である。
引用:児童発達支援ガイドライン
また同じ第5章の中には以下のような内容も示されています。
第5章 児童発達支援の提供体制
6保護者との関わり
(2)子どもや保護者に対する説明責任等
ウ 保護者に対する相談援助等
○ 職員は、保護者が悩み等を自分だけで抱え込まないように、保護者からの相談に適切に応じ、信頼関係を築きながら、保護者の困惑や将来の不安を受け止め、専門的な助言を行うことも必要である。例えば、保護者との定期的な面談(最低限モニタリング時に実施することが望ましい)や訪問相談等を通じて、子育ての悩み等に対する相談を行ったり、子どもの障害について保護者の理解が促されるような支援を行ったりすることが必要である。
○ 職員は、父母の会の活動を支援したり、保護者会等を開催したりすることにより、保護者同士が交流して理解を深め、保護者同士のつながりを密にして、安心して子育てを行っていけるような支援を行うことが必要である。また、家族支援は保護者に限った支援ではなく、兄弟姉妹や祖父母等への支援も含まれる。特に兄弟姉妹は、心的負担等から精神的な問題を抱える場合も少なくないため、例えば、兄弟姉妹向けのイベントを開催する等の対応を行っていくことも必要である。
○ 設置者・管理者は、職員に対して、保護者との定期的な面談や保護者に対する相談援助について、その適切な実施を促すとともに、随時報告を受けることや記録の確認等により、把握・管理する必要がある。
引用:児童発達支援ガイドライン
3.【家族支援】4つのポイント
先程はガイドラインに示されている内容を抜き出してご紹介しましたが、文章も多いためイマイチ要点がつかみきれないところもあるかと思います。
そこで内容をギュッと集約して4つのポイントにまとめてみました。
①保護者の想いを受け止め、寄り添う
障害があるこどもの保護者は、常に不安の中で子育てをしています。
定型発達と言われる方々の成長と、人生の歩みは比較的イメージしやすいと思います。
生まれてから歩き出し、話しはじめ、幼稚園・小学校・中学校・高校・大学等進路を選びながら成長して、仕事に就き独り立ちをしていく。
もちろんいろいろな人生があり、たくさん悩みながら子育てを行うことは間違いないですが、人生の道が全くイメージできないということはないと思います。
しかし、障害があるこどもの子育ては暗闇の中で進んでいるようなものです。
わからないことばかり、先の見えないことばかり。
周りからの視線への恐怖や、他者へ迷惑をかけてしまうという不安。
それでも眼の前にあること1つ1つを調べて、考えて、立ち止まりそうになりながらも一歩一歩進んでいるのです。
家族の形は多様であり、理解の仕方や期間も保護者によって異なることを支援者は理解しつつ、丁寧に保護者の気持ちに寄り添って支援しましょう。
【具体的な対応の一例】
- 保護者の意見に丁寧に対応して、信頼関係を築く
- 家庭や学校の様子について、保護者に聞く
- 悩んでいる様子を見かけたら、じっくりと話せる時間を確保する
②必要な情報を提供して、一緒にこどもの育ちについて考える
障害があるこどもの子育ては暗闇の中で進んでいるようなものとお伝えしました。
暗闇の中で少しでも不安を取り除くには、明かりを灯してすこしでも将来への見通しや希望を持つことが必要です。
こどものことがわからない
そんな時は、こどもの障害特性や行動の特徴などについての情報をわかりやすくお伝えしましょう。
そうすることでこどもの言動の理由が少しずつ見えてくると思います。
想いを共有したい
そんな時は、保護者同士の交流の機会をつくったり、サークルなどの情報を提供しましょう。
こどもとどう関わっていいかわからない
そんな時は、支援者がこどもとどのように接しているか、環境を整えているかを見ていただくこともいいかと思います。
こどもが事業所で出来たことや成長していることなど、日頃の様子を保護者にしっかりと伝えることも大切です。
時にはペアレントトレーニングなどの情報も提供しながら、保護者の引き出しを増やしていきましょう。
ここで大切なことは、得た知識を家庭でも出来るように一緒に考えることです。
知識や技術を身に着けたからといって、違う場面で活かすためには時間や練習が必要です。
自宅や学校、通所事業所ではそれぞれ環境も接する人も違うので、同じやり方でうまく行くかどうかもわかりません。
必要な情報を提供しつつ、ご家族が過ごす時間と環境の中にどのように取り入れていったらいいかを支援者とご家族が一緒に考えることが必要です。
③関係機関とつながる
1人の支援者、1つの事業所だけでこどもと家庭を支えることは困難であると同時に、様々なリスクがあります。
支援者が限られている場合のデメリット
- 支援に対する視点が画一的になる
- 頼れる先が限られることで、保護者の依存度が高まる
- 支援者も他に頼れないことで、無理をして虐待等が起こる可能性が高まる
逆に多くの支援者が支援に関わることで得られるメリットは多くあります。
関係機関とつながるメリット
- 支援に対する視点が多角的になる
- 保護者が多くの支援者を実感することで安心できる
- 支援者も頼る先が出来ることで、相談しながら無理なく支援ができる
これらのような良い効果が期待できます。
もちろん多くの関係機関とつながることで「保護者がどこに相談していいか困ってしまった」「支援の方向性を決定するスピードが遅れてしまった」といった可能性も考えられるため、状況に応じた判断と交通整理は必要です。
【つながる関係機関の例】
- こども家庭センター
- 保健師
- 学校、スクールソーシャルワーカー 等
- 放課後児童クラブ
- 児童相談所
- 相談支援事業所
- 病院
- ショートステイ、日中一時事業所
たくさんの関係機関がありますが、「障害児」という分け方をするのではなく特別なニーズを持ったこどもの子育てとして、社会全体で家庭を見守ることが大切だと思います。
④母親だけでなく家庭全体をみて支援する
子育ての中心を担うのは母親であることが多いです。
そのため、おのずと学校や事業所の対応は母親が多くなり、子育ての不安や負担が母親に偏ることもあります。
逆に支援者と接する機会が少ない父親やきょうだいなどは、誰にも言えない悩みを抱えているかもしれません。
そうならないために家族全体を見て、どのような支援が必要かを考えることが必要です。
母親に負担が偏っている
そんな時は、父親や祖父母といった他のご家族と支援者が話す機会を持つ。もしくはイベントに参加していただくなど少しずつ、こどもやこどもがつながる関係機関と関われる機会を増やしていきましょう。
きょうだいが悩みを抱えている
そんな時は、支援者と話す時間を設けて不安や悩みを話してもらえるような環境をつくったり、他のご家庭のきょうだいと交流できる機会を設定してもいいでしょう。
また、必要に応じてスクールソーシャルワーカーなど関係機関とつながって、支援者が手を取り合いながら支援することも有効だと思います。
100コの家族があれば、100通りの家族の形があります。
同じ家族構成でも、考え方や環境等が全く同一ということはあり得ません。
こども一人一人に合ったオーダーメイドの支援が必要であるのと同時に、家族に合ったオーダーメイドの支援が必要です。
まとめ
家族支援についてガイドラインの内容に触れた上で、4つのポイントに絞ってご説明させていただきました。
支援者は「こどもは家庭の中で育つ」こと「障害があるこどもの家族は不安を抱えている」ことをしっかりと理解しつつ、
▶保護者の想いを受け止め
▶必要な情報を提供しながら一緒に考えて
▶関係機関とつながり
▶家族全体を見て
支援しましょう。