国として障害を持った子供の支援については、教育だけ福祉だけではなくそれぞれが連携することが必要と考え、文部科学省と厚生労働省で「家庭と教育と福祉の連携『トライアングル』プロジェクト」を発足して、連携を進めるための方法を検討してきました。
そして平成30年3月に会議の報告、5月に会議の内容を受けて県や市、教育委員会等に通知が出されました。
今回は、トライアングルプロジェクトで話し合われた内容と、それに沿って示された進めていく取り組みの方向性を、わかりやすく解説をしていきたいと思います。
今の課題
教育と福祉の連携について
教育と福祉、双方の理解の乏しさ
そもそも、連携する前の段階として、教育側も福祉側もお互いの仕組み等をあまり理解出来ていないことが多いです。
学校の先生も、放課後等デイサービスなどの障害児サービスを良く知らないので、情報の共有などの話をしても、そこがどういった場所なのか、何に必要かがわからず、協力が得られないこともあります。
逆に福祉サービスのスタッフも学校の仕組みをよく知らないので、どんな連携が出来るかなどがわからない・・・
管轄の違い
県や市町村で、学校を管轄している部署と、放課後等デイサービスなどを管轄している部署がそもそも違う。そのため、共有がされにくい。
保護者支援について
相談窓口がわかりにくい
乳幼児期、学齢期から社会参加に至るまでの各段階で、必要となる相談窓口が分散していて、保護者は、どこに、どのような相談機関があるのかが分かりにくく、必要な支援を十分に受けられないことがあります。
例えば市町村等によっても違いますが
学校に就学に関する相談は、教育委員会
子育てについての相談は、子ども関係部署
障害児サービスについては、障害福祉関係部署
とかに分かれていたりします。
沢山窓口があるのはもちろんメリットもありますが、沢山ありすぎてどこに相談したらいいかわからないということになってしまいます。
さらには、障害児の相談が障害福祉関係部署になると、相談に行くハードルも一気に上がってしまいますよね。
子育ての悩みを相談できる先が少ない
少し前のように何世代かで一緒に暮らすことも少なくなり、地域の関係性の希薄さなども加わって、周囲に子育てに関する悩みなどを話せる方もおらず、保護者が孤立感や孤独感を感じてしまうこともあります。
今後の対応
上記のような課題がある中で、切れ目なく支援をしていく体制を構築するために、文部科学省と厚生労働省が連携して、教育と福祉の連携の促進等に取り組むよう市町村等に促していく方針を示しています。
教育と福祉の連携
教育委員会と福祉部局、学校と障害児通所支援事業所との関係構築の「場」の設置
課題として教育と福祉の相互の理解が足りないということが挙げられているので、相互理解が出来る「場」を設定が求められています。設定する際には、今それぞれの地域にある特別支援教育連絡協議会や自立支援協議会を活用するなど効率性も求めつつ、効果がある「場」にできるようにして行く必要があります。
学校の教職員等への障害のある子どもに係る福祉制度の周知
先ほど話したように、福祉サービスについて教育側の理解が乏しいという課題があるので、先生方にも障害児サービスについて知ってもらえるよう研修会などで福祉サービス側に説明してもらうなどの取り組みを行うよう求められています。
実際、特別支援学校の先生もあまり障害児サービスについて知らなかったりすることもあるので、必要なことだと思います。
学校と障害児通所支援事業所等との連携の強化
学校と障害児サービスが連携できるように、「他の地域ではこんなにいい感じで連携しているよ」という事例を参考にしながら、自分たちの地域でどんな連携ができるかを考えていくことが求められています。
また、厚生労働省は放課後等デイサービス事業所向けに、「放課後等デイサービスガイドライン」を出しているのですが、その内容も連携を強化した内容に改定することも示されています。
個別の支援計画の活用促進
学校では支援が必要な子どもに「個別の教育支援計画」を作りますが、その際に保護者や福祉等が連携して作成されるようにする事が必要です。
それと同時に、「個別の教育支援計画」が学校生活に関してだけでなく、家庭生活や地域での生活を含めた一貫した支援が計画的に進められるよう保護者や関係機関の参画を促す仕組みも必要です。
障害児サービスもサービスを提供する際に子どもに合わせて個別支援計画を作りますが、その作成についても学校等と連携して作るように推奨されています。
同じ子どもに関わる立場として、バラバラの計画になることなく、一緒に考えていきましょうということですね。
保護者支援を推進するために
保護者支援のための相談窓口の整理
わかりやすい相談窓口を作っている市町村等の事例を踏まえ、保護者がどこに相談すればいいかをわかりやすく示すとともに、直接の担当でない職員であっても保護者がたらい回しにならないように適切な窓口を紹介できるよう工夫を促すことが求められています。
保護者支援のための情報提供の推進
障害児サービスがわかりやすく利用しやすくなるよう、市町村等において情報や相談窓口が一目でわかるような、保護者向けハンドブックを作成して周知する事が必要です。
国も市町村に任せっきりではなく、進みやすくするためにハンドブックのひな形等を作ることが示されています。
保護者同士の交流の場等の促進
悩みを共有したり、先輩の保護者から進路の話などを聞くことで安心できる部分もあるので、ピアサポート(同じ保護者の立場で相談にのる)の推進、ペアレントメンター(専門的な研修を受けた障害のある子どもを持つ保護者)の養成等実施も大切です。
さらに家庭での学びも持てるようペアレントプログラムなど、保護者が障害特性について理解出来る機会を増やす取り組みも求められています。
相談支援の専門性向上
サービスを利用する際に相談に乗り、計画を立てる相談支援専門員が、より障害のある子どもについての知識や経験を積むことで、より子どもに適した支援計画の作成や保護者への助言等がしやすくなります。そういった学びの機会を作ることも求められています。
まとめ
トライアングルプロジェクトで話し合われた内容と、それに沿って示された進めていく取り組みの方向性を、僕なりに噛み砕いて解説しました。
大きい市町村になればなるほど、縦割りな組織になることも多いです。でも障害を持った子どもを支援するためには、子どもを取り囲む関係者がネットワークを作り、子どもに対して共通の見解で関わっていくことが大切です。
もちろん、先駆的にスムーズな連携体制が整っている地域もあります。しかし全くと言っていいほど連携できていない地域、学校、事業所もあります
国ではこういったプロジェクトで、教育と福祉の連携を進めています。知らずに連携が進まないのは残念ですよね。
学校や福祉サービス事業所に通う中で、連携がイマイチだと思ったらトライアングルプロジェクトを知っているかどうか聞いてみてください。
もし知らなかったら「国から推進されていますよ」と伝えて、必要性を認識してもらいましょう。
もっともっと子どもを取り囲む環境を良くしていきましょう。
最後にトライアングルプロジェクトに関するリンクのご紹介
文部科学省 厚生労働省 教育と福祉の一層の連携等の推進について(通知)
厚生労働省 家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクト報告