2023年12月22日に閣議決定された、こども大綱
どんなものか皆さんご存じでしょうか?
こども大綱はこども施策を進めるために作成しなければならないと、こども基本法に定められているものです。
こども大綱には今後5年程度を見据えたこども施策の方向性や大事なことが盛り込まれ、今後はこども大綱の内容に合わせて取り組みが進められるということになります。
別紙も合わせると63ページにもなるこども大綱ですが、ポイントを押さえてわかりやすく解説したいと思います。
是非、こども大綱の内容を理解して、こどもたちの笑顔につなげましょう。
- 1.こども基本法に明記されている、こども大綱
- 2.目指しているのは「こどもまんなか社会」
- 3.「こどもまんなか社会」実現のための6つの柱
- ①こども・若者を権利の主体として認識し、その多様な人格・個性を尊重し、権利を保障し、こども・若者の今とこれからの最善の利益を図る
- ②こどもや若者、子育て当事者の視点を尊重し、その意見を聴き、対話しながら、ともに進めていく
- ③こどもや若者、子育て当事者のライフステージに応じて切れ目なく対応し、十分に支援する
- ④良好な成育環境を確保し、貧困と格差の解消を図り、全てのこども・若者が幸せな状態で成長できるようにする
- ⑤若い世代の生活の基盤の安定を図るとともに、多様な価値観・考え方を大前提として若 い世代の視点に立って結婚、子育てに関する希望の形成と実現を阻む隘路(あいろ)の打破に取り組む
- ⑥施策の総合性を確保するとともに、関係省庁、地方公共団体、民間団体等との連携を重視する
- 4.こども施策に関する重要事項
- 5.こども施策を推進するために必要な事項
- 6.まとめ
1.こども基本法に明記されている、こども大綱
こども大綱については、こども基本法に明記されています。
第九条
政府は、こども施策を総合的に推進するため、こども施策に関する大綱(以下「こども大綱」という。)を定めなければならない。
2 こども大綱は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 こども施策に関する基本的な方針
二 こども施策に関する重要事項
三 前二号に掲げるもののほか、こども施策を推進するために必要な事項
引用:こども基本法
法律が定められただけで社会が変化していくわけではありません。
法律に基づいた具体的な取り組みを実施していくことで、法律が目指す社会に近づいていきます。
こども基本法が目指す社会に近づくために、必要な取り組み等をこども大綱で示すという形です。
こども基本法については↓こちらで解説しています。
2.目指しているのは「こどもまんなか社会」
こども大綱に最初に明記されているのは、目指すべき社会「こどもまんなか社会」についてです。
こどもまんなか社会とは全てのこども・若者が、日本国憲法、こども基本法及びこどもの権利条約の精神にのっとり、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、 ひとしくその権利の擁護が図られ、身体的・精神的・社会的に将来にわたって幸せな状態 (ウェルビーイング)で生活を送ることができる社会
引用:こども大綱
こどもまんなか社会をわかりやすく端的に言えば
全てのこどもが健やかに成長でき、将来にわたって幸せに暮らせる社会ということです。
さらにこども大綱にはこどもや若者の利益を第一に考え、こども・若者・子育て支援に関する取り組みを日本社会の中心に据えて「こどもまんなか社会」を実現することがこども大綱の使命と記されています。
※こども大綱には「こども」と「若者」という記載があります。こども基本法には「こどもとは心身の発達の過程にある者」と定義されており、年齢的な定義づけはされておりません。こども大綱における「若者」という表記は思春期(中学生年代からおおむね18歳まで)及び青年期(おおむね18歳以降からおおむね30歳未満)の者としています。取り組み等において青年期全体を含むイメージをわかりやすくするため「若者」という言葉を使用しています。
3.「こどもまんなか社会」実現のための6つの柱
こども大綱では「こどもまんなか社会」を実現するための基本的な方針を、以下の6つの柱にまとめています。
①こども・若者を権利の主体として認識し、その多様な人格・個性を尊重し、権利を保障し、こども・若者の今とこれからの最善の利益を図る
- こどもは生まれながらに権利の主体である。
- こどもや若者の自己選択・自己決定・自己実現を社会全体で後押しする。
- 固定的な性別役割分担意識や特定の価値観、プレッシャーを押し付けられることなく、主体的に、自分らしく、幸福に暮らすことが出来るよう支えていく。
- 権利の侵害からこどもを守り、救済する。
②こどもや若者、子育て当事者の視点を尊重し、その意見を聴き、対話しながら、ともに進めていく
- おとなはこども・若者の意見を年齢や発達の程度に応じて尊重する。
- こども・若者の意見形成への支援を進め、声を聞かれにくいこども・若者を含め意見を表明しやすい環境づくりと配慮を行う。
- こども・若者と共に社会課題を解決することで、こども・若者の自己実現の後押しにもなると共に、民主主義の担い手の育成に役立つ。
③こどもや若者、子育て当事者のライフステージに応じて切れ目なく対応し、十分に支援する
- こども・若者に状況に応じて必要な支援が特定の年齢で途切れることなく行われ、若者が自分らしく社会生活を送ることが出来るようになるまでを、社会全体で切れ目なく支える。
- 「子育て」は乳幼児期だけのものではなく、こどもの誕生前から男女ともに始まっており、時期を経ておとなになるまで続くと認識して、ライフステージを通じて社会全体で子育て当事者を支えていく。
- 子育て当事者が経済的な不安や孤立感を抱いたりすることなく、ゆとりを持ってこどもに向き合えるように取り組む。
- こども・若者や子育て当事者をめぐる課題は単一分野のみでは解決できないとの認識の下、あらゆる分野の関係機関や団体が協働しながら、一体となってこども・若者や子育て当事者を支える。
④良好な成育環境を確保し、貧困と格差の解消を図り、全てのこども・若者が幸せな状態で成長できるようにする
- 乳幼児期からの安定した愛着(アタッチメント)の形成を保障する。
- こども・若者に良好な生育環境を保障し、幸せな状態で成長し、尊厳が重んじられ、自分らしく社会生活を営むことが出来るように取り組む。
- インクルージョンの観点から、一般施策において、困難な状態にあるこども・若者を受け止められる施策を講じる。
- 家庭においてこどもを養育することが困難な場合は、永続的解決(パーマネンシー保障)を目指して、里親や児童施設等において安定的、継続的な養育を提供する。
- こども・若者・子育て支援に携わる関係者が、こどもの権利を理解してこどもの声を傾聴するゆとりを持てるよう職場環境等の改善とあわせ、多様な人材の確保・養成、専門性の向上、メンタルケア等を充実させる。
⑤若い世代の生活の基盤の安定を図るとともに、多様な価値観・考え方を大前提として若 い世代の視点に立って結婚、子育てに関する希望の形成と実現を阻む隘路(あいろ)の打破に取り組む
※愛路←物事を進める上で妨げとなるものや条件
- 若い世代が社会の中で自らを活かす場を持つことができ、現在の所得や将来の見通しを持てるようにする。
- 若い世代の雇用と所得環境の安定を図り、経済的基盤を確保する。
- 若い世代が自らの主体的な選択により、結婚し、こどもを産み、育てたいと望んだ場合に、それぞれの希望に応じて社会全体で若い世代を支えて行くことが少子化対策の基本。
- 共働き・共育てを推進し、家庭内において育児負担が女性に集中している実態を変え、男性の家事や子育てへの参画を促進する。
⑥施策の総合性を確保するとともに、関係省庁、地方公共団体、民間団体等との連携を重視する
- こども家庭庁は政府全体のこども施策を強力に推進し、必要に応じて関係省庁に対し勧告権を行使することも含め、リーダーシップを発揮する。
- こども施策の具体的な実施を中心的になっているのは地方公共団体であり、国と地方公共団体の視点を共有しながら、こども施策を推進する。
- 若者が主体となって活動する団体やこども・若者や子育て支援に取り組む団体や企業の共助を支える。
- こどもの権利条約を誠実に遵守するとともに、国際的な議論などを踏まえて国内施策を進める。
4.こども施策に関する重要事項
こども施策にとって大切なことが3つの項目に分かれて示されています。
また、おとなとして自分らしく社会生活を送ることができるようになるまでは、その置かれた環境にも大きく依存するため、こどもによってその時期も様々であることも理解が必要です。
【ライフステージを通した重要事項】 ライフステージを通して縦断的に取り組むべきものが示されています。 ▶こども・若者が権利の主体であることの社会全体での共有等 ▶多様な学びや体験、活躍できる機会づくり ▶こどもや若者への切れ目ない保健・医療の提供 ▶こどもの貧困対策 ▶障害児支援・医療的ケア児等への支援 ▶児童虐待防止対策と社会的擁護の推進及びヤングケアラーへの支援 ▶こども・若者の自殺対策、犯罪などからこども・若者を守る取り組み
【ライフステージ別の重要事項】 出来るだけこども・若者の視点でわかりやすくするために、ライフステージ別に記載されています。 (子どもの誕生前から幼児期まで) ▶妊娠前から妊娠期、出産、幼児期までの切れ目ない保健・医療の確保 ▶こどもの誕生前から幼児期までのこどもの成長の保障と学びの充実 (学童期・思春期) ▶こどもが安心して過ごし学ぶことのできる質の高い公教育の再生等 ▶居場所づくり ▶小児医療体制、心身の健康等についての情報提供やこころのケアの充実 ▶成長年齢を迎える前に必要となる知識に関する情報提供や教育 ▶いじめ防止 ▶不登校のこどもへの支援 ▶校則の見直し ▶体罰や不適切な指導の防止 ▶高校中退の予防、高校中退後の支援 (青年期) ▶高等教育の修学支援、高等教育の充実 ▶就労支援、雇用と経済的基盤の安定のための取組 ▶結婚を希望する方への支援、結婚に伴う新生活への支援 ▶悩みや不安を抱える若者やその家族に対する相談体制の充実
【子育て当事者への支援に関する重要事項】 少子化や核家族化等による社会や環境の変化によって、子育てをする方が経済的な不安や過度な負担等を抱くことなくこどもに向かい合えるように重要なことが示されています。 ▶子育てや教育に関する経済的負担の軽減 ▶地域子育て支援、家庭教育支援 ▶共働き・共育ての推進、男性の家事・子育てへの主体的な参画推進・拡大 ▶ひとり親家庭への支援
5.こども施策を推進するために必要な事項
こどもに関する施策を進めていくために必要なことが
【こども・若者の社会参画・意見反映】
【こども施策の共通の基盤となる取り組み】
【施策の推進体制等】
の3項目から挙げられています。
こども施策においては、こども・若者の社会参画と意見反映を車の両輪として進めていくことが求められています。
こども・若者の社会参加や意見反映は状況を正確に把握し、ニーズを捉えるためにも重要です。
自分達の意見で何かを変えていけるという経験は将来への自信となります。
意見を出せる場を充実させたり、それらの声を取り組みに活かす工夫が求められると思います。
また、こども施策の共通の基盤となる取り組みには「こどもまんなか」の実現に向けたEBPMが示されています。
※EBPM(Evidence Based Policy Making エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)とは、証拠に基づく政策立案のことで、施策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく政策目的にを明確化した上で合理的根拠にものづくものとすること。引用:内閣府HP
こども施策の有効性を高めるためにも統計などの根拠に基づく、計画と評価が必要ですね。
この項目の中では、こども・若者や子育て当事者の視点に立った数値目標が設定されています。
目標を実現するための取組を、国として市町村として、そして社会全体として進めていく必要があります。
6.まとめ
子育てに対して経済的な不安や過度な負荷がかかることなく、こどもが健やかに育ち、安心して暮らせる社会を実現するためにこども大綱は作られました。
こども・子育て支援に携わる方はしっかりと内容を理解し、市町村等と協働しながら自らの取り組みにつなげていきましょう。
子どもの権利条約については↓こちらで解説しています。