児童発達支援管理責任者(以下 児発管)として働き始めて間もない皆さんは、日々の業務に奮闘されていることと思います。
新しい役割に就いて間もない間は、さまざまな課題や悩みに直面する時期でもあります。
この記事ではよくある5つのお悩みについて、障害福祉分野で働いて20年以上のキャリアを持つ筆者から具体的なアドバイスをご紹介します。
児童発達支援管理責任者という、大変だけどやりがいがある仕事に向き合っている方や、これから目指そうとしている方に少しでも参考になれば幸いです。
1. 覚えることがいっぱい!どうすれば効率的に学べる?
児発管として働き始めると、覚えなければならないことが山のようにあります。
障害に関する考え方や法制度は常に変化しており、常に学び続けなければいけません。
法令や制度、支援技術、記録の取り方など、学ぶべき内容は多岐にわたります。
具体的なアドバイス
1.優先順位をつける
まずは、すぐに必要な知識と長期的に身につけるべき知識を区別しましょう。
加算など運営や報酬に関することは、なるべく早く理解しなければいけません。
しかし、支援技術等については段階的に身に着けていくものでもあります。
- すでに身に着けている知識
- 常にアップデートしなければいけない情報
- 今後身につけたい知識
といったように整理をしながら優先順位を考えることが大切です。
日々の業務に直結する内容から順に学んでいくことで、効率的に知識を吸収できます。
2.オンライン学習ツールを活用する
e-ラーニングやオンライン講座を利用すれば、自分のペースで効率的に学習できます。
通勤時間や休憩時間を利用して、スキマ時間で学習を進められるのも魅力です。
下記のように無料で研修動画などを見ることが出来るサイトもあります。
3.アウトプットする
人間は忘れる生き物です。聞いた言葉や学んだ知識は、使わなければあっという間に忘れてしまいます。
知識を身に着けるためにはインプットだけでなく、アウトプットすることで知識が定着しやすくなります。
学んだことを、誰かに伝えてみましょう。
仕事の中で1つでも取り入れて。実践してみましょう。
きっとその行為1つ1つが、借りものだった知識を自らの武器へと変化させてくれることでしょう。
覚えることが多いからこそ、効率的な学習方法を見つけることが重要です。
自分に合った学習スタイルを見つけ、継続的に知識を吸収していくことで、着実にスキルアップを図ることができます。
2. やることがいっぱい!時間管理のコツは?
児発管の業務は多岐にわたります。
個別支援計画の作成、職員の育成、保護者対応、関係機関との連携など、やるべきことが山積みで時間が足りないと感じることも多いでしょう。
具体的なアドバイス
1.To-Doリストを活用する
やることを整理するならTo-Doリストが簡単で取り入れやすいです。
今は紙ではなくオンライン上でTo-Doリストも作れ、常に確認しやすくすることもできます。
今抱えている業務をTo-Doリストにまとめ、優先順位をつけましょう。
〆切が決まっている仕事なら、Googleカレンダーにタスクとして入力するのもいいと思います。
緊急性と重要性を考慮し、効率的に業務を進めましょう。
2.委譲できる業務は委譲する
「その仕事は、児発管のあなたじゃないとできない仕事ですか?」
支援の提供において中心的な役割を担う児発管には、様々な業務が舞い込んできます。
あれもやらないと、これもやらないと。
でも少し考えてみましょう。それは児発管じゃないとできない仕事でしょうか?
「チームのメンバーに負担をかけたくない」
「お願いして嫌な顔をされたらどうしよう」
「自分でやった方が早い」
そんな考えも浮かぶと思いますが、児発管が仕事を抱えて無理をしなければ維持できないチームは、結局長続きしません。
スタッフの強みを生かせる仕事を、思い切ってお願いしてみましょう。
最初はミスもあるでしょう。
しかし、その仕事は間違いなくメンバーを成長させ、チーム全体を向上させてくれます。
チーム力を向上させていくことは、児発管の大きな役割です。
リーダーが仕事を抱えてしまうチームは、それ以上成長することはありません。
3.「ポモドーロ・テクニック」を試す
聞いたことありますか?ポモドーロ・テクニック。
集中する時間と休憩時間を繰り返すことで、仕事のペースを生み出す時間管理法です。
手順としては
- タイマーを25分に設定して作業を開始
- タイマーが鳴ったら3~5分休憩する
- 4~5回に1回は15分程度の長い休憩をとる。
という感じです。
個別支援計画の作成や行事計画など、様々な書類を作成しなければいけない児発管は「作らないと」という思いに押しつぶされそうになることもあります。
また、長時間の作業はどうしても集中力も落ちてしまいます。
コンスタントに休憩をとることで、集中力を維持する。
そして作業を25分と細かく区切ることで、「5人分の個別支援計画を作る」という広いタスクから「〇〇さんの支援内容の項目を考える」と、ゴールを明確に絞ったタスクに変えて仕事をすることが出来ます。
これを聞いて、「いいかも?」と思った方は試してみてください。
時間管理は様々な方法がありますが、自分に合っていなければ意味がありません。
試行錯誤しながら自分に合った方法を見つけていくことが大切です。
これらの方法を参考に、効率的な業務遂行を目指してみてください。
3. コミュニケーションに気を遣う場面が多い!どう対応すべき?
児発管の役割には、子どもたちや保護者、職員、関係機関など、さまざまな立場の人とのコミュニケーションが含まれます。
それぞれの立場や状況に応じたコミュニケーションが求められるため、必然的に気を遣う場面も多くなります。
具体的なアドバイス
1.傾聴スキルを身に着ける
コミュニケーショントラブルで往々にしてあることが、相手が伝えたい事をしっかりと理解できていないということです。
コミュニケーションをスムーズにするために、まずは相手が言いたい事をしっかりと理解することが必要です。
そのために役に立つのが傾聴スキルです。
傾聴スキルを使用することで、信頼関係構築や話をしている人の自己理解につながる効果も期待できます。
「傾聴」については⇩こちらで詳しく解説しています。
相手の話をしっかりと聴き、理解しようとする姿勢が大切です。
相手の言葉を遮らず、適切なタイミングで相づちを打ったり、質問したりすることで、相手の思いを十分に受け止めることができます。
2.明確で具体的な表現を心がける
相手の言いたい事を理解するのと同様に、自分の言いたい事を的確に相手に伝えることも非常に重要です。
言いたいことがうまく相手に伝わらないという経験は、どなたにもあるのではないでしょうか?
ご家族等に話すときは、専門用語などはできるだけ避け、相手にわかりやすい言葉で説明するよう心がけましょう。
保護者や子どもとのコミュニケーションでは、具体的な例を挙げながら説明することも効果的です。
スタッフと話すときも、ズバッと伝えることでショックを受けてしまうかもという思いから、抽象的な表現になってしまうこともあります。
しかし、伝わり切れなかった思いは時間がたてばたつほどズレていってしまう危険性もはらんでいます。
本当に伝えたいことは明確に伝えることが大切です。
大切な話をする際には、相手の状況や周りの環境などにも配慮することでコミュニケーションをスムーズにする手助けをしてくれます。
3.感情のコントロールを学ぶ
福祉や介護の仕事は、感情労働といわれます。
※感情労働とは社会学者のアーリーが提唱した概念で、仕事上自分の感情をコントロールして業務にあたること
こどもとの関わりでうまく行かないことも多く、保護者からの過度な要望など、時には難しい状況に直面することもあります。
しかし、そんな時に自分の感情をすべて表に表出していたらコミュニケーションがうまく行くはずもありません。
感情をコントロールするために
▶自分がどんなことでイライラしやすいかを知る
行列に横から入られた、待ち合わせに遅刻されたなど様々な場面を想定して、その場面のイライラ度を数値化してみましょう。
自分の怒りの傾向が見えてきます。自分がイライラする場面や相手の態度などを理解しておくことで、対策を考えることが出来ます。
▶その場から一度距離を置く
怒りのピークは6秒と言われます。
カッとしたときにすぐに言葉を出したり、行動することで怒りが表出された言動となってしまいます。
カッとした、イラっとしたときは一度その場から離れてみましょう。
保護者と対面で話しているときなど席を離れられないときは、何か物を落とすなど意図的に時間を作ってもいいかもしれません。
訓練が必要な方法ではありますが、一呼吸置くことでその場で怒りの感情に流されない効果が期待できます。
いろいろ試して、自分なりの感情のコントロール方法を見つけましょう。
コミュニケーションスキルの向上は、日々の実践と振り返りを通じて徐々に身についていきます。
一朝一夕には身につかないかもしれませんが、これらのポイントを意識しながら、粘り強く取り組んでいくことが大切です。
4. こどもと保護者の想いがズレている!どうすれば良い?
こどもの発達支援において、こどもの想いと保護者の想いにズレが生じることは珍しくありません。
このような状況では、児発管として両者の橋渡し役となり、適切な支援につなげていくことが求められます。
具体的なアドバイス
1.両者の想いをしっかりと聴く
まずなによりも、子どもと保護者それぞれの想いを聴くことから始めましょう。
個別に時間を設け、それぞれの考えや感情を十分に理解することが大切です。
表面的に出てきている言葉も、深めていくと違う思いから生まれていることも珍しくありません。
どういった考えなのか?なぜそう思うのか?
先に紹介した傾聴スキルも活用しながら、しっかりと深めていきましょう。
2.客観的な情報を提供する
児発管は支援の専門家です。
専門家として、子どもの発達状況や支援の必要性について、客観的な情報を提供することが大切です。
思いのズレはお互いに見えていること、持っている情報が違うことから生まれることも多いです。
こどもは経験の乏しさや、認識の違いから想像できることに限りがあります。
いろいろな経験の場を提供し、こどもにわかる方法で選択肢を提示することでこどもなりに考えて選択することが出来ます。
保護者も親としてこどもを心配する想いを強く持っていたり、こどもの能力を把握していない場合もあります。
専門家からの視点で、こんなこともあんなことも出来るという成功経験を共有したり、将来利用できるサービスなどをわかりやすく伝えることで選択肢が増えていきます。
エビデンスに基づいた説明を心がけ、両者が納得できるよう情報を共有しましょう。
3.定期的な三者面談を実施する
それぞれの想いを明確にし、情報をわかりやすく提供して選択肢を広げたら、あとはそれをすり合わせる場の提供です。
こども、保護者、支援者が一堂に会して話し合う機会を設けましょう。
1回で想いをすり合わせることが出来るわけもありませんから、必要に応じて実施します。
とても労力のいることですがそれぞれの想いを共有し、互いの理解を深めることで、支援の方向性を一致させやすくなります。
話し合う際は、話しやすい環境設定(他者に聞かれにくい、リラックスできる空間等)を心がけることも大切です。
子どもと保護者の想いのズレを完全になくすことは難しいかもしれません。
しかし、両者の想いを尊重しながら、専門家としての知見を活かして最適な支援を提供することが、児童発達支援管理責任者の重要な役割です。
粘り強くコミュニケーションを重ね、信頼関係を築きながら、子どもの最善の利益を追求していくことが大切です。
5. 悩みを聞いてもらえる人がいない!どうすれば良い?
児発管は、支援の質の向上に責任を持つ立場にあります。
そのため、自身の悩みや不安を周囲に相談しづらいと感じることも多いでしょう。
しかし、一人で抱え込むことは精神的な負担が大きく、バーンアウトのリスクも高まります。
具体的なアドバイス
1.仲間とつながる
仲間=地域で一緒に頑張る他事業所の児発管(サビ管)
この悩みに関してのアドバイスはこの一択です。
児発管の理解者は児発管。
同じ立ち位置で頑張っている仲間との交流は、心の支えとなること間違いなしです。
もちろん合わない人もいる、嫌な思いをすることもあると思いますが
それ以上に
悩んでいるのは自分だけじゃないと、ホッとするでしょう。
支援について、仕事について新たな気づきを得るでしょう。
負けられないと、前に進む力をもらえるでしょう。
ケース会議等でつながっている方だけに限らず、できるだけネットワークを広げることで多くの刺激や気づきが得られます。
SNSを活用することも良いと思います。
自分なりの方法で、多くの仲間とつながりましょう。
児発管として、一人で全ての問題を解決しなければならないと思い込む必要はありません。
周りの仲間と交流し、自身のメンタルヘルスにも気を配りながら、長期的に質の高い支援を提供していくことが大切です。
まとめ
児童発達支援管理責任者として多くの方々が直面する5つの悩みについて、具体的なアドバイスを交えて解説してきました。
これらの悩みは、多くの方が経験する共通の課題であり、決して一人で抱え込む必要はありません。
- 覚えることが多い場合は、優先順位をつけ、ツールを活用しながらアウトプットして効果的に学習を進めましょう。
- 業務が多い場合は、時間管理の方法を探り、業務移譲しながら効率的な仕事の進め方を身につけましょう。
- コミュニケーションに悩む場合は、傾聴スキルや感情コントロールを学び、明確で具体的な表現を心がけましょう。
- 子どもと保護者の想いにズレがある場合は、両者の想いをしっかりと聴き、少しづつすり合わせていきましょう。
- 悩みを相談できる人がいない場合は、同じ児発管とつながって交流しましょう。
これらの課題に取り組むことで、より充実した支援活動につながり、専門職としての成長も期待できます。
また、児童発達支援管理責任者としての役割を果たすためには、自分の心のケアも重要です。
ストレス管理などの時間を確保し、長期的に質の高い支援を提供できる環境を整えていくことが大切です。
児発管に求められることは増えています。
こどもたちに最適な支援を提供できるよう、常に最新の情報や技術を学び続けましょう。