今年の6月に「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」(以下、医療的ケア児支援法)が可決されました。
近年の障害福祉分野でも支援の必要性が強く示されている医療的ケア児についての法律はどのような内容なのか、今回は僕の解釈を交えながらわかりやすく解説したいと思います。
1.医療的ケアと医療的ケア児
この法律で「医療的ケア」は
人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為と定義されています。
その他としては、気管切開した所の管理、胃ろう、腸ろう、胃管からの経管栄養などです。
「医療的ケア児」の定義は、わかりやすく噛み砕くと
普段の生活をしたり、学校などに通うために常に医療的ケアが必要な18歳になる前の方(18歳になっても高校などに通っている方は対象)
となります。
2.医療的ケア児の現状
近年の医療の進歩によって、多くの命が助かるようになりました。医療的ケア児の増加は、医療面の進歩が背景にあります。
在宅で生活している医療的ケア児は正確な数はわかりませんが、令和元年で約2万人ほどいるとみられています。平成17年で1万人弱でしたので、10年超でだいたい倍ぐらいに増えていることになります。
生まれてすぐNICUなどに入院して、成長する中で体調が安定してきたらお家での生活に移行します。お家に戻ったといっても、人工呼吸器や喀痰吸引などの医療的ケアは常に必要です。
生活の中で常に必要なケアの担い手は、家族が中心にならざるを得ません。
さらに、医療的なケアが要因で幼稚園や学校などに通うことも困難なケースも少なくありません。
環境が整っていないからと、近い学校に通学できない。
通学できたとしても、何かあったときのために保護者が常に付き添わないと通学できないといったケースもあります。
そんな状態だと、家族の誰か(主に母親)が仕事をすることも諦めて、子どもの対応に追われることになってしまいます。
現状では生活をする上で家族にかなり大きい負担がかかってしまっています。
医療的ケア児の現状についてはこちら↓で詳しく解説しています。生活実態調査から見える現状がわかります。ぜひご覧ください。
3.医療的ケア児支援法のpoint
何でこの法律ができたか?というと、
ということです。
法律で示されている主なポイントは大きく2つあります。
POINT① 努力義務ではなく「責務」と明記されている
簡単に言うと「頑張りなさい」ではなく「やらないとダメですよ」ということ。
やるべきことは以下の通りです。
POINT② 医療的ケア児支援センターを作る
各都道府県で医療的ケア児支援センターを作ることも求められています。(都道府県が作っても、社会福祉法人等にお願いしてもどちらでも可)
など、地域の支援体制を構築することが求められています。
まとめ
医療的なケアが必要な子どもは数も少なく、支援の仕方も一人ひとり違うので体制が作りにくかったり、体制づくりには大きな負担がかかることも多く、支援の手が広がりにくい面がありました。
しかし、数が少なくても困っている人は居るので、障害があるために本来できるはずのことが出来ないことは、無くしていかなければいけません。
医療的ケア児支援法が出来ましたが、この法律ができたからすぐに体制が整うというわけではありません。
これからはこの法律を基に、一人ひとりに向き合いながらそれぞれの地域で必要な支援を作り上げていく必要があります。
この法律が、障害を持つ子どもとその家族が望む生活をするためのスタートになることを願っています。