入所施設と聞くとどんなイメージをお持ちでしょうか?
暗くて、狭くて、閉ざされている。そんなイメージをお持ちの方も居るのではないかと思います。
今回は障害児入所施設について解説させていただきます。障害を持った子どもとの生活に悩んでいる方や、障害を持った子どもと関わる機会がない方でも、地域にはこういった施設があるんだということを知っていただければと思います。
1.障害児入所施設って何?
障害児入所施設をわかりやすく説明すると
です。
障害児入所施設は平成24年の児童福祉法改正で定められた障害児支援事業の1つです。
それ以前は・知的障害児施設・ろうあ児施設・盲児施設・肢体不自由児施設など多くの施設種別に分かれていましたが、法改正で「福祉型障害児入所施設」と「医療型障害児入所施設」の2つにまとめられました。
2.施設数
日本にある児童養護施設と障害児入所施設の数です。
施設数(箇所) | 定員数(人) | |
児童養護施設 | 611 | 32,000 |
障害児入所施設(福祉型) | 258 | 9,390 |
障害児入所施設(医療型) | 218 | 20,705 |
引用:厚生労働省平成 30 年社会福祉施設等調査の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/fukushi/18/dl/gaikyo.pdf
医療型には国立病院機構の施設数や人数も含まれています。
イメージしやすいように、児童養護施設の数と並べてみました。
児童養護施設よりは少ないですが、福祉型と医療型両方を合わせると施設の数もけっこう多いと思いませんか?
また、障害児入所施設の数は都道府県によって差があります。
北海道や神奈川県、兵庫県など施設数が10施設を超えている都道府県もあれば、1施設しか無い都道府県もあります。
3.入所の形は「措置」と「契約」の2種類
児童福祉法の改正により、平成18年10月から保護者と施設との契約による「契約制度」が導入されました。(それ以前はすべての子どもが措置制度対象でした。)
それにより、「措置入所」と「契約入所」の2つの入所形態に分かれています。
措置については下記に該当するかどうかによって判断されます。
①保護者が不在であることが認められ、利用契約の締結が困難な場合
②保護者が精神疾患等の理由により、制限行為能力者又はこれに準ずる状態にある場合
③保護者等の虐待等により、入所が必要であるにもかかわらず利用契約の締結が困難と認められる場合
引用:障害児施設給付費等の支給について(平成19年3月22日障発第0322005号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
つまりは、保護者がいない場合や虐待を受けている場合、もしくは保護者が契約を結ぶことが難しい場合に「措置」対応になるということですね。
同じ入所施設を利用していても、「措置」で入所している子どもと「契約」で入所している子どもに分かれています。
4.利用するためには
障害児入所施設を利用するためには、児童相談所への相談が必要です。
「契約」入所であっても、保護者と施設のみで入所を決定することは出来ません。
児童相談所が保護者と話をしたり、現在の家庭状況を確認した上で入所が必要かどうかを判断します。
ちなみに障害者手帳を持っていなくても入所は可能です。
5.入所理由
施設に入所する理由は下の図の通りです。
虐待の割合については、実感としては以前よりも増えてきたように感じます。虐待が増えてきた要因としては、虐待についての理解が進んで以前よりも発見されやすくなったことも考えられると思います。
その他の理由としては、子どもに適した教育を近場で受けることが出来ないため通学のために入所したり、子どもの自立訓練のためといった理由が含まれます。
子どもの行動面の課題が大きくて在宅での生活が困難になる場合もありますが、家庭等の要因で施設を利用せざるを得ないことが多いです。
入所理由は子どもの課題というよりは、家庭や社会状況の課題と言えると思います。
6.入所経路
入所する前まえ子どもが最後に過ごしていた場所について、厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 障害福祉課 障害児・発達障害者支援室調べ(平成31年1月17日時点)によると、「福祉型」「医療型」それぞれのトップ3は
入所経緯は上記のとおりになっています。(※医療型は100%超えていますが重複もあっての数値になっていると思われます)
福祉型、医療型共に半分以上は家庭からの入所となっています。
福祉型の3番目に多い児童養護施設からの入所経緯ですが、児童養護施設の中で障害を持つ子どもは増加しており、30%弱の子どもが何らかの障害をもっているというデータが出ています。
7.施設での生活
施設での生活はどのような感じなのか気になりますよね?
もちろん施設ごとに異なりますが、おおまかなイメージをお伝えしたいと思います。
僕が関わっている障害児入所施設についても、集団生活なので「集団生活ならではのルール」はありますが、個別の外出を増やしたりと工夫しながらその生活はできるだけ家庭に近い形を目指しています。
こちら↓の記事では障害児入所施設の生活の様子をご紹介しています。
8.利用料
利用する際の利用料ですが、入所の2つの種類でも少し触れたように「措置」の場合は行政権限での利用決定という背景がありますので、負担はほぼありません。保護者の収入に応じた一部負担金はあります。
契約の場合は通常の児童発達支援や放課後等デイサービスと同じように料金の支払いが必要となります。サービスの利用料や、食費、日用品費や、施設生活で使う子どものお小遣いなども必要になるため、保護者の収入等によっても変わりますが、1ヶ月3〜5万円程度かと思います。
ちなみに子どもが入所した場合特別児童扶養手当を受けている家庭は、その支給はストップします。
9.利用を考える方へ「長期的な視点も大切」
基本的にはどの保護者も施設なんかに預けたくない。自分の子供と一緒に暮らしたいと考えています。
しかしその思いが子どもとの生活の中で頑張る限界を超えてしまうと、もう子どもとの生活は一切考えられなくなってしまいます。
そうなる前に保護者や子どもが大変な時期に少し距離をとってお互いを見つめ直す時間があることで、また家庭で一緒に生活できるようになるかもしれません。
期間限定1〜2年間の入所生活で子どもは専門的な支援のもとで自分でできることを増やし、保護者は心と体を安定させて子どもとの生活の準備をする、そんな明確な目的を持った施設の使い方がその後の長い未来のためになることもあると思います。
10.入所施設も地域の一員
障害児入所施設についてご紹介させていただきました。
入所施設は子どもを守り、健やかな成長をサポートする施設です。
入所施設と言うと自分たちの世界とは別世界のように感じることもあるかもしれませんが、入所施設はショートステイなど在宅の方に向けたサービスも提供しながら地域に開かれた施設であることを目指しています。
子どもを保護する目的もありますのでなんでもオープンにというわけには行きませんが、入所している子どもにもできるだけ家庭に近い環境を提供するために、地域の方にもこういった施設があることを知っていただきたいと思っています。
皆さんの地域にもきっとある、障害児入所施設について是非目を向けてみてくださいね。
【設備】
子どもの部屋(個室、複数人部屋)のほか、食堂や医務室(静養室)、お風呂など生活に必要な設備のほか、遊ぶスペースもあります。目が不自由な子どもが生活している場合は、音の設備を整える必要があるなど、生活をしている子どもによって必要な設備も変わります。最近ではより家庭に近い環境を求めて、小規模ユニットなどの環境を整えている施設もあります。
【職員】
保育士や児童指導員といった職種の職員が、子どもを支援します。その他、管理者、児童発達管理責任者、看護師、栄養士、調理員、職業指導員や心理担当職員など、施設によっては幅広い職種の職員が勤務しています。
【生活】
子どもたちは学校に通いながら、施設で生活します。排泄や着替えなどのADL(日常生活動作)も支援を受けながら身につけていきます。洗濯や掃除など身の回りのことも練習しています。季節ごとの行事もあったり、外出したり生活の中での楽しみもできるだけ多く取り入れています。自宅への一時帰宅や保護者等との面会なども可能です。(虐待などの入所理由もあるため、対応はケースによります。)