令和6年12月25日に令和5年度都道府県・市区町村における障害者虐待事例への対応状況等(調査結果)が公表されました。
障害者虐待防止法が施行された平成24年10月から毎年調査して、結果が公表されています。
※調査結果は「養護者による虐待」と「障害者福祉施設従事者等による虐待」の2つに分かれています。この記事では福祉事業所スタッフ向けに「障害者福祉施設従事者等による虐待」の調査結果をご紹介いたします。
令和4年度の調査結果も以下の記事で解説しています。合わせてご覧ください。
これまでも虐待判断件数等の数値がほぼ毎年最多更新している状況ですが、令和5年度の調査結果においても過去最多を更新しています。
障害福祉に関わる方はしっかりと現状を理解することが重要です。
虐待に関連する他の記事も合わせてご覧ください。
1.被虐待者数は昨年より74.3%増!

このグラフは平成24年から令和5年までの
- 相談通報件数(件)
- 虐待判断件数(件)
- 被虐待者数(人)
これらの推移を示したものです。
パッと見るだけでも、すべての項目が右肩上がりに増加していることがわかります。
令和4年度の数値と比較すると
- 相談通報件数 36.9%↑増
- 虐待判断件数 24.9%↑増
- 被虐待者数 74.3%↑増
いずれの数値も令和4年度を超えて過去最多の数値となっています。
ちなみに結果報告書には各都道府県ごとの5年間の
- 相談通報件数
- 虐待判断件数
- 相談通報件数に対する虐待判断件数の割合
を比較した表も出されています。

そこで示されている「相談通報件数に対する虐待判断件数の割合」が高い都道府県と低い都道府県を見ると以下の通りです。
ベスト5(低い都道府県)
①香川県(11%)
②宮城県(13%)
③岐阜県(14%)
③福岡県(14%)
⑤和歌山県(15%)
ワースト5(高い都道府県)
①青森県(39%)
②秋田県(36%)
③宮崎県(34%)
④福井県(32%)
⑤福島県(31%)
皆さんがお住まいになっている都道府県の数値はいかがでしたでしょうか?
年度ごとに繰り越しているケースもあるみたいなので参考値ではありますが、各県によっても差が見られます。
※画像だとかなり細かくて見にくいので、詳しく見たい方は実際の資料をご覧ください。
2.虐待が最も多く発生しているのはグループホーム

虐待の発生要因
資料の左下にある市町村等職員が判断した虐待の発生要因(複数回答)を令和元年度からと並べて比較してみると下記の通りです。
市町村等職員が判断した虐待の発生要因 | 令和元年度 | 令和2年度 | 令和3年度 | 令和4年度 | 令和5年度 |
---|---|---|---|---|---|
教育・知識・介護技術等に関する問題 | 59.8% | 71% | 64.5% | 73.6% | 65.4% |
職員のストレスや感情コントロールの問題 | 55.3% | 56.8% | 54.8% | 57.2% | 55.6% |
倫理観や理念の欠如 | 53.6% | 56.1% | 50% | 58.1% | 54.6% |
虐待を助長する組織風土や職員間の関係性の悪さ | 16.2% | 22.6% | 22% | 31.8% | 26.9% |
人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ | 24.2% | 24.2% | 24.7% | 31.4% | 27.3% |
いずれの数値も昨年度よりは下がっています。
上記に挙げられた項目以外の要因が増えているということかもしれません。
障害福祉に携わる上で必要な「理念」については以下⇩で解説しています。
虐待の発生要因と対策については以下⇩で解説しています。
虐待が認められた事業所種別
虐待判断件数の中で事業所種別ごとに見てみると、以下の通りです。
- 共同生活援助(GH) 338件 28.3%
- 障害者支援施設 244件 20.4%
- 生活介護 152件 12.7%
- 放課後等デイサービス 146件 12.2%
- 就労継続支援B型 124件 10.4%
構成割合が10%を超えているのが上記の5つの事業種別です。
昨年同様共同生活援助、障害者支援施設の2つが20%を超えています。
特に共同生活援助は
令和3年度23.2% ⇒ 令和4年度26.4% ⇒ 令和5年度28.3%
というように虐待の全体の数の中での割合が増え続けています。
虐待等による死亡事例
虐待での死亡事例は1件。
障害者支援施設において身体障害と知的障害がある男性への虐待。
虐待類型は「放棄・放置」
虐待者の職種は生活支援員でした。
まとめ
令和5年度の福祉施設職員による障害者虐待の数値は過去最多の数値となっています。
被虐待者数については前年度より74.3%とビックリするぐらいの数値です。
障害福祉に関わる方は、この現状をしっかりと理解して
個人として
チームとして
事業所として
地域として
虐待を防ぐ取り組みを日々考えていかなければならないと思います。