「誰にでも意思はある」
あたり前のことですが、日々の生活の中で埋もれてしまうことも少なくありません。
障がい福祉事業所で働くみなさんは日々、障害のある方の意思決定支援に携わっていることと思います。
今回は、障害のある方への意思決定支援において特に重要な4つのポイントについて、わかりやすく解説していきます。
この記事を通じて、より良い支援の実践につながるヒントを見つけていただければ幸いです。
意思決定支援ガイドラインについては↓こちらで解説しています。合わせてご覧ください。
1. 個別性の尊重:一人ひとりに合わせたアプローチ
障害のある方への意思決定支援において、最も大切なことの一つが「個別性の尊重」です。
障害の種類や程度、生活環境、価値観など、一人ひとりの状況は千差万別です。
そのため、画一的なアプローチではなく、個々の特性に合わせた支援が求められます。
個別性を尊重するために
a.アセスメントの重要性
障害の状態や生活環境、コミュニケーション能力などを丁寧に把握しましょう。
生活には変化がつきものです。そのため定期的な再アセスメントを行い、変化に対応することが大切です。
b.コミュニケーション方法の工夫
言葉でのコミュニケーションが難しい方も多いです。
言語を使用していても、しっかりと言語で理解できているかは確認が必要です。
必要に応じて絵カードやサインなど、本人に適した方法を見つけましょう。
c.選択肢の提示方法
選択肢の数や内容、提示の仕方を、その人の理解力や好みに合わせて調整しましょう。
カードなど視覚的な情報提供が効果的な場合もあります。
個別性を尊重することで、その人らしい意思決定を支援することができます。
一人ひとりの特性をよく理解し、柔軟なアプローチを心がけましょう。
2. 自己決定の尊重:押し付けではなく、寄り添う支援
意思決定支援において、支援者の役割は「決定を押し付ける」ことではなく、「自己決定を支える」ことです。
障害のある方が自分で選択し、決定する力を最大限に発揮できるよう支援することが重要です。
自己決定を尊重するために
a.十分な情報提供
決定に必要な情報をわかりやすく提供しましょう。
メリット・デメリットを含め、中立的な立場で情報を伝えることが大切です。
b.信頼関係の構築
意思を表出してもらうためには信頼関係が欠かせません。
丁寧に本人に寄り添いながら信頼関係の構築を目指しましょう。
c.失敗する権利の保障
「最初からすべてうまくいく」なんてことはありません。
それを念頭に置いて、失敗を恐れずに挑戦できる環境を整えましょう。
もちろん、失敗した場合のフォローアップ体制も重要です。
d.意思の尊重と安全性のバランス
意思決定支援は、本人の意志に全て従うということではありません。
本人の意思を最大限尊重しつつ、できないことや危険なことなどはしっかりと説明するなど安全面にも配慮が必要です。
リスクがある場合は、代替案を一緒に考えるなどの工夫をしましょう。
自己決定を尊重することで、障害のある方の自己肯定感や自己効力感を高めることができます。
支援者は、本人の意思を引き出し、それを実現するためのサポート役に徹することが大切です。
3. チームアプローチ:多角的な視点で支える
意思決定支援は、一人の支援者だけで行うものではありません。
スタッフ個人の価値観に、本人の支援が左右されないためにもチームでの支援が必要です。
家族、医療関係者、福祉サービス提供者など、様々な立場の人々が協力して行うチームアプローチが効果的です。
チームアプローチを実践するために
a.多職種連携の重要性
医療、福祉、教育など、様々な分野の専門家の知見を活かしましょう。
定期的なケース会議を開催し、情報共有と方針の統一を図りましょう。
b.家族との協力
家族は重要なサポート源です。
家族の意見も尊重しつつ、協力関係を築きましょう。
家族と支援者の役割分担を明確にすることも大切です。
c.ピアサポートの活用
同じような経験を持つ人からのアドバイスは、大きな力になります。
ピアサポートグループへの参加を促すことも検討しましょう。
d.支援者間の情報共有
支援記録の充実と共有を徹底しましょう。
ICTツールの活用も効果的です。
チームアプローチにより、多角的な視点から意思決定を支援することができます。
それぞれの専門性や強みを活かし、より良い支援につなげていきましょう。
4. 継続的な見直しと改善:PDCAサイクルの実践
意思決定支援は一度で完結するものではありません。
常に見直しと改善を行い、より良い支援を目指す姿勢が重要です。
PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を意識した支援プロセスを心がけましょう。
PDCAサイクルを実践するために
a.定期的な評価(Check)
支援の効果を定期的に評価しましょう。
本人の満足度や生活の質の変化にも注目しましょう。
b.柔軟な計画の修正(Act & Plan)
評価結果に基づき、支援計画を柔軟に修正しましょう。
本人の意向や環境の変化に応じて、目標や方法を見直すことが大切です。
c.新たな取り組みの実施(Do)
修正した計画に基づき、新たな支援を実践しましょう。
段階的な導入や試行期間の設定も効果的です。
d.記録と振り返り
支援の経過や結果を詳細に記録しましょう。
定期的な振り返りの機会を設け、支援者自身の成長にもつなげましょう。
PDCAサイクルを意識することで、支援の質を継続的に向上させることができます。
常に改善の余地を探り、より良い支援を目指す姿勢が大切です。
まとめ:意思決定支援の実践に向けて
ここまで、障害のある方への意思決定支援に大切な4つのポイントについて解説してきました。
- 個別性の尊重
- 自己決定の尊重
- チームアプローチ
- 継続的な見直しと改善
これらのポイントを意識しながら支援を行うことで、障害のある方の意思決定を効果的に支援することができます。
しかし、理論を知るだけでなく、実践を通じて経験を積み重ねていくことが何より大切です。
日々の支援の中で、これらのポイントを意識し、試行錯誤を重ねていきましょう。
そして、支援者同士で経験や知見を共有し、学び合う機会を大切にしてください。
障害のある方の意思決定を支援することは、その人らしい人生を実現するための重要な取り組みです。
支援者の皆さんの日々の努力が、障害のある方の豊かな生活につながっていくことを願っています。
最後に、意思決定支援に関する研修や勉強会への参加、最新の支援技術や制度に関する情報収集など、自己研鑽を続けることも重要です。
共に学び、成長しながら、より良い支援を目指していきましょう。