急激に事業所数が増加している児童発達支援。
そんな児童発達支援は支援の質も課題となっています。
障害児支援として障害のある子ども本人やその家族のために支援の質を保ち、そして向上させていく必要があります。
そのために、「児童発達支援ガイドライン」は作られました。(平成29年7月)
児童発達支援ガイドラインは児童発達支援が提供すべき支援の内容を示し、支援の一定の質を担保するための全国共通の枠組みを示すものです。
この記事では、ガイドラインの中で示されている本人支援の5領域について解説します。
児童発達支援で求められている本人支援は何なのか?をご理解いただければと思います。
児童発達支援ガイドライン全体については↓こちらの記事で解説しています。是非ご覧ください。
1.支援の全体図は「発達支援」・「家族支援」・「地域支援」
児童発達支援で提供すべき支援は、大きく分けると
「発達支援」・「家族支援」・「地域支援」の3つ
「発達支援」は児童に提供される支援ですが、発達支援も「本人支援」と「移行支援」に分かれます。
この記事で解説する本人支援は重要な支援ですが、「移行支援」も同様に重要です。
障害の有無にかかわらず全てのこどもが共に成長できるようにする移行支援において、児童発達支援は重要な役割を担っています。
それは、障害のあるこどもの発達状況や家族の意向などを確認し、地域において保育・教育が受けられるよう保育所等に行う後方支援です。
児童発達支援に求められている支援の全体的なイメージを理解しましょう。
2.本人支援は家庭や保育所等に広がっていく
発達支援の中の本人支援は、こどもの発達についての側面から5領域にまとめられています。
しかし子供の成長発達に関することなので、5領域はそれぞれが独立しているということではなく、相互に関連したり重なっています。
そして本人支援の大きな目的は、子どもが将来日常生活や社会生活を円滑に営めるようにすることです。
当たり前の事ですが支援は子どもたちの生活の為であり、事業所内での安定を目指しているわけではありません。
事業所内での支援は少しずつ家庭や保育所等に広がっていくものであるという認識が大切です。
(ア)健康・生活
領域における支援についてガイドラインの内容を要約して解説します。
「健康・生活」の領域は、健康な心と体を育て自ら健康で安全な生活を作り出すことを支援します。
安心安全に事業所を利用していただくためにも、自ら発信することが難しい子どものサイン等に気付けるようきめ細やかな観察が必要です。
生活において自分でできることが増える基本的生活スキルの獲得は、家庭だけでは困難なことも多いです。
環境面の違いもありますが家庭・事業所・保育所等で統一した関わりを行うことで生活スキルの獲得につながりやすくなります。
排泄や食事など生活に必要なスキルを身につけられるよう支援しましょう。
また、多くの領域に関連する部分が構造化です。
子どもが理解しやすく、安心できる環境設定のための構造化はあらゆる領域で必要となることを理解しましょう。
(イ)運動・感覚
この領域では体の使い方についてや感覚の活用について支援します。
姿勢の保持や動作の習得を支援しますが、さまざまな理由でそれらが困難な場合は補助手段を活用して出来るようにするといった支援が必要です。
「~が出来なければ」という考え方ではなく「~すれば出来る」というような柔軟な考え方が大切です。
感覚を補助したり、代わりの手段となる補助機器をうまく活用できる支援も求められます。
発達に障害がある子どもは感覚に特性がある場合も多いです。
聴覚が敏感な場合、イヤーマフなど道具を使うことで生活しやすくなることもあります。
感覚は外から見てわかりにくいものではありますが、感覚の特性がある子どもは辛い思いをしてしまうことも多いです。
支援者が気付いて、感覚の過敏さや鈍麻などに合わせた環境調整を行いましょう。
(ウ)認知・行動
多くの情報がある社会の中で、必要な情報を集めて理解することは困難なことも多いと思います。
簡単な情報を集めて理解することからスモールステップで支援することが大切です。
時間や数の概念などは、数字だけでなは理解しにくいです。
絵やタイムタイマー等視覚的な要素を取り入れながら理解を促進しましょう。
発達に障害がある子どもは、その特性から認知の偏りも起こりやすいと言われています。
アセスメントから子どもの感覚や認知の偏りを把握し、それらから起こりうる環境等への適応の難しさなどへの支援が必要です。
(エ)言語・コミュニケーション
コミュニケーションには環境面や関係性も重要であるため、子どもが意見を出しやすい配慮が必要となります。
言語のコミュニケーションに限らず多様なコミュニケーション手段を活用して、意志の伝達が出来るように子どもに合った方法を伸ばすことも大切です。
不適応行動と言われる、他害や自傷、もの投げ等は自分の気持ちを相手に伝えたいが、どうやって伝えたらいいかわからないときに起きる行動であることも多いです。
他者に自分の気持ちを伝える手段があるだけで、子どもの辛さを軽減できる可能性は高まります。
言葉はもちろんカードや指差しなど、その子に合った意思伝達方法を身につける支援をしましょう。
そのためには支援する側が多様なコミュニケーションの方法を理解しておく必要があります。
支援者が子どものコミュニケーションの枠を狭めることが無いよう注意が必要です。
(オ)人間関係・社会性
子どもにとって人間関係や社会性の広がりは、今後の育ち方に大きく影響します。
そして関係性を広げていくためには、スタッフとの信頼関係も大切です。
安心できる土台があることで、人間関係を広げていくチャレンジができます。
発達に障害がある子どもは集団に苦手さがあります。しかし、集団の中で何をするかを明確にすることで適応しやすくなります。
子どもが一歩踏み出せるよう、しっかりした前準備と安心できる環境設定を欠かさないようにしましょう。
3.個別支援計画に5領域の支援のつながりを見える化する
ご紹介した本人支援の5領域ですが、児童発達支援ガイドラインには下記のように記載されています。
児童発達支援計画に、子ども本人のニーズに応じた「支援目標」を設定し、それを達成するために、「発達支援(本人支援及び移行支援)」、「家族支援」及び「地域支援」で示す支援内容から子どもの支援に必要な項目を適切に選択し、その上で、具体的な支援内容を設定する。 なお、選択した支援内容の項目についても、具体的な支援内容と共に、児童発達支援計画に明記することが必要である。また、「いつ」、「どこで」、「誰が」、 「どのように」、「どのくらい」支援するかということが、児童発達支援計画において常に明確になっていることが必要である。 引用:児童発達支援ガイドライン
令和5年3月に出された「障害児通所支援に関する検討会報告書」にも
5領域とのつながりを明確化できる個別支援計画のフォーマットをガイドラインで示すことを検討する旨が記載されています。
放課後等デイサービスガイドラインの改訂も検討されており、支援において自分たちの行っている支援を5領域にあてはめながら明確化する必要があります。
令和5年3月障害児通所支援に関する検討会報告書については↓こちらをご覧ください
上記は厚労省のHPにあげられている、児童発達支援計画内でガイドライン項目を記載する例です。
先ほどお伝えした通り、ガイドラインの改訂に合わせ計画様式フォーマットの見直しも検討される方向ではありますが、現時点で自分たちの支援と5領域のつながりを明確化するための参考としてご覧ください。
まとめ
児童発達支援ガイドラインにおいて本人支援は5領域にまとめられています。
この5領域はそれぞれが独立しているものではなく、関連して重なりあっています。
児童発達支援で行う本人支援は、事業所の中だけのものではありません。
子どもの生活が円滑に営めるよう、家庭や保育所等に広がっていくものです。
本人支援の5領域を理解して、適切な支援の提供に繋げましょう。