「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」(いわゆる、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)が令和4年5月25日に公布・施行されました。
アクセシビリティは「利用しやすさ」という意味です。
この記事では、法律の内容を僕なりにポイントを押さえてわかりやすくお伝えします。
どんな方でも情報の取得や意思疎通は生活をする上で欠かせない大事なものです。
法律の内容を理解して、みんなが出来るだけ不自由なく生活できる社会に近づけていきましょう。
1.法律の目的
この法律の目的は以下のように示されています。
(目的) 第一条
この法律は、全ての障害者が、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加するためには、その必要とする情報を十分に取得し及び利用し並びに円滑に意思疎通を図ることができることが極めて重要であることに鑑み、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の基本となる事項を定めること等により、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を総合的に推進し、もって全ての国民が、 障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。
引用:障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(令和4年法律第 50 号)
法律の文章なので堅苦しくわかりにくいかと思いますが、わかりやすくすると
社会の一員である障害者が様々な活動に参加するために情報を得て利用することや、スムーズに意思疎通ができることが大切。
この法律で必要なことを定めて、障害の有無に関わらず共に尊重しあう共生社会の実現に役立てる。
ということです。
今の社会では様々な障害がある方が必要な情報が得にくかったり、意思疎通が困難な場面があります。
それを変えていくために法律が作られました。
2.基本理念
法律では基本理念が示されています。
1 情報取得等について可能な限り、その障害の種類及び程度に応じた手段を選択することができるようにする
2 どこの地域でも同じく情報取得等ができるようにする
3 障害がない方と同一内容の情報を同一時点において取得できるようにする
4 高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術を活用する
どの項目も当たり前のことであり必要なことであることがわかると思います。
障害や地域などに関係なく情報を得たり、スムーズなコミュニケーションができるようにしていくことが必要です。
3.責務
責務とは責任と義務。やらなければいけないこと。という意味ですね。
国と地方公共団体の下部にあるように、意思疎通の取り組みは障害がない方にも役立つという認識はとても大切です。
努力義務ではありますが、責務として定められていることを理解しましょう。
4.基本的施策
a.障害者による情報取得等に資する機器等(第 11 条関係)
・機器やサービスの開発と普及を進める為に助成や規格の標準化、情報提供などを行う
・機器等を利用できるように使い方の支援や講習会等の実施、及び実施する事業所への支援
・機器等の促進や質の向上のために話し合う場を設ける
b.防災及び防犯並びに緊急の通報(第 12 条関係)
・障害の種類程度に応じて情報を早く確実に取得できるよう体制の整備充実等を行う
・障害がある方が緊急通報をスムーズにできるように多様な手段による緊急通報の仕組みの整備を進める
c.障害者が自立した日常生活及び社会生活を営むために必要な分野に係る施策 (第 13 条関係)
・意思疎通支援者の確保、養成
・医療、介護、福祉等サービスやスポーツ施設等運営者に対する意思疎通取り組み支援
d.障害者からの相談及び障害者に提供する情報(第 14 条関係)
・障害がある方が相談しやすいように情報取得、意思疎通に配慮する
・障害の有る方への情報提供は、障害の種類及び程度に応じて配慮する
e.国民の関心及び理解の増進(第 15 条関係)
・障害者の情報取得や意思疎通の重要性を広報活動啓発活動を通じて広げる
f.調査研究の推進等(第 16 条関係)
・障害者の情報の取得や意思疎通に関して調査研究を進め、普及させる
5.付帯決議
この法案の成立にあたり、衆議院から付帯決議がつけられました。
付帯決議とは「議決した法案などに付けられる、その法律の運用について政府に求める項目」のことです。
法的な拘束力はありません。
付帯決議
①障害者の情報の取得や意思疎通等ができるように作った機械や、情報通信技術を活用したサービスを優先的に調達する制度を検討する
②コミュニケーションやアクセシビリティの推進のため法の見直しなど必要な措置を取る
③コミュニケーションやアクセシビリティについて相談窓口の設置を検討
④行政提出書類、選挙、災害時などコミュニケーションとアクセシビリティの促進についての検討
⑤手話言語法の立法を含め、手話に関する施策充実の検討を進める
今後法律を運用する中で、付帯決議に付けられている内容も一緒に進んでいくことを期待します。
まとめ
障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法について解説させていただきました。
社会の中で生活するうえで、情報の入手・利用、コミュニケーションは欠かせないものです。
同じ地域で暮らす誰もが安心して過ごせる社会づくりのために、法律の理解を深め1人1人が取り組めることを考えていきましょう。