皆さんの地域にある自立支援協議会についてご存じでしょうか?
聞いたことはあるけど、参加したことないな・・・
何をしているのか、よく知らない・・・
福祉事業所の方でもこのようなお話をよく聞きます。
自立支援協議会は障害がある方の支援を考えるうえで、欠かせない仕組みです。
平成24年4月から障害者自立支援法等の一部改正により法定化されました。
目の前の障がいがある方の支援を考えるためには、地域という枠で考えることが大切です。
正しく理解して正しく活用しましょう。
自立支援協議会の活性化のための障害者総合支援法について↓こちらで解説しております。合わせてご覧ください。
1.法的根拠
自立支援協議会については総合支援法にて示されています。
法律の文章なのでわかりにくい面もありますが、
簡単に言えば
「いろいろな人が関わる協議会を置いて、地域の状況に合わせた支援体制を検討してください」
ということです。
この内容がそのまま自立支援協議会を置く目的とも言えます。
2.組織体制
自立支援協議会の組織体制図の例です。
個別支援会議等から見えた地域ニーズに対し、それぞれの分野ごとの部会で検討し、事務局会議や定例会で整理して全体会に挙げます。
大事なポイントとしては、個別支援会議等個別のケースからスタートするということです。
地域という大きな枠で考える自立支援協議会ですが、スタートは「個別ケースから浮かび上がってくる地域ニーズ」。
そのポイントを間違えると、だれのためになんのために地域の在り方を検討するかがブレてしまいます。
また、この組織体制は「自立支援協議会の運営マニュアル」を参考にした例となっています。
定例会が無かったり、部会の下にさらに特化した検討を行うワーキンググループがあったりと、それぞれの地域に応じた組織体制になっています。
3.市町村協議会
自立支援協議会の役割や機能について、「障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律第89条の3第1項に規定する協議会設置運営要綱」から抜粋してご紹介します。
市町村協議会は地域における支援を考える中核的な役割とされています。
設置方法も構成メンバーも地域によって違いはあります。
主な機能はご覧の通りですが、ポイントとしては課題の共有、連携強化、障害福祉計画の把握等が挙げられます。
個別ケースから挙がってきた課題を地域ニーズとしてメンバーで共有し、地域としての対応の検討につなげます。
また、市町村という単位で協議する協議会は、顔が見える関係性を作るための有効な場となります。福祉関係に限らず、教育や保健、医療など関係機関をメンバーとしてともに協議をすることで、具体的な動きにつながることも多いです。
さらに障害福祉計画においても自立支援協議会は大事な協議の場です。
市町村は、第八十九条の三第一項に規定する協議会(以下この項及び第八十九条第七項において「協議会」という。)を設置したときは、市町村障害福祉計画を定め、又は変更しようとする場合において、あらかじめ、協議会の意見を聴くよう努めなければならない。
引用:障害者総合支援法
総合支援法には上記のように示されています。
障害福祉計画は地域をより良くしていくための計画です。その計画の作成や変更には自立支援協議会の意見が非常に大切です。
逆に言えば、もし障害福祉計画に自立支援協議会からの意見が反映されていなければ、その点を物申すことも必要ということです。
障害福祉計画についてはこちら↓でわかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。
4.都道府県協議会
次に都道府県協議会についてです。
基本的役割は市町村協議会の中核的な役割とは違い、主導的な役割となっています。
都道府県という広い地域を考える協議会ですので、都道府県の現状を把握しながら市町村を導いていく役割が期待されます。
主な機能は都道府県全体を把握しての協議・対応となりますが、ここで大切なポイントは市町村協議会との連携です。
市町村という生活圏域での具体的な課題をもとに協議をしている市町村協議会から、課題や取り組みなどを把握して他の市町村につなげたり、大きな課題やニーズとして、県単位での取り組みを検討することが必要です。
市町村から県、県から国というようにニーズが集まり整理されて、必要に応じて大きな枠での協議につながります。
5.自立支援協議会の機能
自立支援協議会には6つの機能があります。
それぞれのポイントを運営マニュアルの内容を参考に解説します。
(1)情報機能
Point 潜在化した情報を顕在化する
日々対応しているケースにおける、ニーズや支援は関わっている方たちしかわからないことです。
それらを協議の場で顕在化して初めて地域課題や地域ニーズとして認識されることになります。
1人1人の支援者が持っている情報を共有しないと見えてこないものがあることを強く認識することが大切です。
(2)調整機能
Point 分野ごとの資源の共有化と整合性の確認
支援は一つの分野のみで解決することは少なく、福祉・保健・医療・教育など多くの分野が関わっていくことが必要です。
そのためには、まずそれぞれの分野の資源(取り組み等)を共有することが大切です。
そうすることで、資源を整理して連携を構築でき、課題に対して資源を有効的に活用することにつながります。
障害福祉計画の進捗管理と調整も忘れてはいけない大切な役割です。
(3)開発機能
Point 課題の集積→検討→提案
開発機能と言っても、自立支援協議会はあくまで協議の場であり企業や行政ではないので、建物を作ったりサービスを提供したりすることが出来るわけではありません。
それでも個別ケースから見える課題を集め、課題解決のためにどういったことが必要かを検討し、必要と思われる資源の開発や改善について全体会等を通じて提案します。
例えば、市町村等に新たな事業を提案したり、バラバラに行っていたAとBというサービスを組み合わせて課題にアプローチできるよう改善するといったイメージです。
これは、多くの関係者が集まり、多くの情報を基に検討している自立支援協議会だからこそできることです。
(4)教育機能
Point 「利用者の可能性」×「支援者の可能性」×「地域の可能性」=無限大
教育機能は利用者・支援者・地域が持っている無限の可能性に働きかける機能です。
個別ケースを集め、他分野の資源を整理し、課題解決に向けて検討する場に参加するだけで学ぶことはもちろん多くあります。
しかし、連携強化のための他分野に関する勉強会、事例検討会、支援手法に関する研修会などを開催することで、さらに地域の可能性を広げ問題解決能力を促進することにつながります。
(5)権利擁護機能
Point ノーマライゼーションの理念とソーシャルインクルージョンの視点
障害がある人もない人も差別や区別されることなく、決して孤立せずその人らしく生活することのできる地域やそのための仕組みを作っていくために必要な課題を協議する場が自立支援協議会です。
障害がある方の権利侵害は表面化しにくいことを理解し、本人の意思を確認しながらニーズを実現していく方法を地域として検討し、必要に応じて権利擁護についての検討の場を持つなどの取り組みが求められます。
(6)評価機能
Point 公と私が協働する場
自立支援協議会で検討し取り組んだ内容について、その成果情報を集めることで今後の課題が見えてきます。
公的な立場と私的な立場が集まる自立支援協議会は取り組みの成果を確認するための情報を集めやすい立場です。
評価としてはもちろん明確な数値などは有効ですが、それにとらわれず個別ケースの課題解決につながっているかや様々な方からの声も大切な要素です。
まとめ
自立支援協議会について解説しました。
障害がある方の支援は、目の前にいるその時だけに限りません。
家族や地域などの環境も含めて考えないと、その時だけの限定的なサポートになったり、支援の方向性を間違う恐れもあります。
困ったことだけに目を向け支援するのではなく、困ってしまう原因に目を向けていくことが大切です。
そしてより良い地域を目指すためには、自立支援協議会という協議の場は欠かせません。
自分たちの地域の協議会を知って、参加してみんなが暮らしやすい地域を実現しましょう。
こちら↓の記事では自立支援協議会の現状についてご紹介しています。是非ご覧ください。