発達に障害がある方は、その特性からコミュニケーションなどに難しさを抱えています。
自分の言いたいことがうまく表現できず、周りの人からの発信もうまく受け止めることが難しい。
それは「学び」の難しさにも繋がります。
今回は発達に障害がある方が陥ってしまいやすい、未学習と誤学習についてご紹介します。
学びの大切な時期は児童期です。
児童を支援する立場である児童発達支援管理責任者は正しく理解することが必要です。
ある日の出来事
学校の教室で発達に障害を持つA君は、隣りにいたB君をいきなり叩いてしまいました。
B君は泣いています。教室にいた先生は、A君に強く注意をしました。
A君は落ち着かない様子で、ウロウロしています。
突然叩かれたB君は痛そうにしています。
先生もどうしてB君が叩いたのかわからず困っています。
でも本当に困っているのはB君や先生だけでしょうか?
なぜそんな行動をしたのか
実はAくんも困っているのかもしれません
いきなり人のことを叩いたのに、叩いた人が困っているってどういうこと?
A君は「困っている自分の気持ちを表現したいと思って、自分に出来る行動をとった=隣の友達を叩くこと」だったかもしれないということです。
例えば、
「隣の子の声がうるさくて我慢できないくらい不快だった」
「この後の予定がわからず、自分が何をしていいか不安で仕方がなかった」
のかもしれません。
こういった自分が伝えたいことを正しく表現できず、不適切な表現方法になってしまう要因として未学習と誤学習があります。
未学習
未学習は文字通り、学習できていない状態ということです。
発達に障害を持つ持たないに限らず、誰しもがその人なりの学ぶ力を身につけています。
しかしその学ぶ力は、自分に理解できる方法でなければ活かすことが出来ません。
例えば、
「目が見えない方に教科書の図を使って説明しても理解できない」、
「耳が聴こえない方に、いくら言葉だけで説明しても理解できない」ですよね。
同じように発達に障害を持った方は、得意なことと苦手なことがあります。
その方の得意なことと苦手なことを理解して、本人が理解できる方法で学習しないと理解できないのです。
つまり未学習とは、本人は学ぶ力はあるが周りの理解が乏しく、理解できる方法で正しく学ぶ機会を提供されなかったため、学ぶことが出来ていないと言えます。
教えてもらえてないから、困った時にどうしたら良いかわからず、
人を傷つけてしまったり、自分を傷つけてしまったり、大声を出したりと、
その時自分ができる行動でなんとか自分の気持ちを伝えたいとしてしまうのです。
誤学習
次に誤学習ですが、誤学習は間違った行動を正しい行動と誤って学習してしまうことです。
先程ご紹介したように未学習のままだと、正しい行動がわからずに間違った行動をとってしまいます。
A君が困っていることを誰かに伝えるために、近くのBくんを叩いてしまったように。
しかし、間違った行動に対して「無理やり止める」もしくは逆に「止められないと思ってA君が喜びそうなことを提供してしまう」ことで、間違った行動が強化されてしまいます。
ということになってしまいます。
つまり誤学習は、間違った関わり方を続けることで間違った表現が正しい表現だと誤って学習してしまうことと言えます。
知ることが大事
発達に障害を持つ方の特性や感覚は独特で個人差も大きいため、周りの人がすぐにすべてを理解することは困難です。
だからこそその方を知るために丁寧なアセスメントが大切です。
その方について理解を深め、正しい学びの機会を提供することが出来れば未学習にも誤学習にもならずに、正しい表現方法を学ぶことが出来ます。
それは社会の中でお互い安心して生活することにつながります。
「未学習」も「誤学習」も、発達に障害がある方が望んでそうなっているわけではありません。
発達に障害がある方がとっている行動は、決してその人が「やりたい」と思っている行動ではなく「これしか出来ない」行動かもしれないと考えることが支援者にとって大切です。
まとめ
私達は生まれて成長する中で、家庭の中で社会の中でいろいろなことを学びます。
教室での学びもあれば友達との学び、周りの大人との学びもあります。
発達に障害のある方は、そういった機会で自然に学びを得ていくことが難しいことが多いです。
それは学べないのではなく、学び方がその人に合っていないのです。
障害があるないに限らず、みんなが自分に合った学びが出来ることが大切ですね。