日常生活の中ではそこまで意識することも無いですが、福祉において主訴とニーズの違いを認識することは大切なことです。
もちろん主訴=ニーズであることもありますが、それらの違いを知っておくことで支援の方向性が大きく変わってきます。
では、その違いをわかりやすく整理していきたいと思います。
ニーズを聞くための傾聴スキルについてこちら↓で解説しています。合わせてご覧ください。
1.主訴
weblio辞書で調べると「患者が医者に申し立てる症状のうちの、主要なもの。」とありました。
医療的な表現なので、福祉的な表現に言い換えると「相談者が支援者に希望する主要なもの」という感じかなと思います。
「子どもをショートステイで預けたい」「仕事をしたい」など、直接的な訴えのことです。
2.ニーズ
weblio辞書で調べると 「必要。要求。需要。」とありました。
すごく端的な表現ですがつまりは「相談者が必要としていること」と言えると思います。
ニーズには自分で気付いているニーズと自分で気付いていないニーズがあります。
3.主訴とニーズは何が違う?
主訴とニーズの基本的な部分を整理したところで実際に何が違うのか?ということになります。
例をもとに考えてみましょう。
子どもをショートステイで預けたいです
こんな主訴があった時、この方はなぜショートステイを使いたいのでしょうか?
話をする中で「子どもが家で落ち着かず、相談者が疲れてしまっているから」という状況が見えたら、「子どもと家で落ち着いた生活をしたい」というニーズが隠れている可能性があります。
仕事をしたいです
仕事をしたいという主訴に対して、仕事をしたい理由を相談者と話しをしながら確認していくことが必要です。
「定期的に旅行に行きたいからお金が欲しい」
「家での居場所が無いので、自分が必要とされる居場所が欲しい」など
それぞれの理由によって、相談者にご提案する内容は変わってきます。
主訴は直接的な訴えとして表面化しますが、その奥に隠れているのがニーズです。支援者は相談者の主訴にのみ、焦点を当ててしまうと本当に相談者が望んでいることが見えないままに支援をして、本当に必要なところに支援が届かないことも考えられます。
4.支援者が押さえておきたいpoint
ニーズはすぐにはわからないことも多い
ニーズは相談者自身も認識していないこともあります。
少し話したくらいの支援者がすぐにニーズを見つけようとすると、見誤ったり、いきなり踏み込みすぎて信頼関係を壊してしまうことにもなりかねません。
相談者と一緒にニーズを認識するためには時間も必要であることを理解しましょう。
ニーズは多様
ニーズは相談者ごとに違います。
その違いは多様性に富んでいて、支援者からしたら理解がむずかしいこともあります。
そんなときでも決して支援者の価値観に当てはめずに、まずは受け入れて頂きたいと思います。
ニーズは変化する
昨日のニーズが、今日のニーズとは限りません。
「旅行に行きたいからお金を稼ぎたい」というニーズだったとしても、仕事をする中で好きな人ができたら「好きな人と一緒に暮らしたい」というニーズに変わることもあります。
環境、社会、人間関係、体調等々すべてが変化していく中で、時間と共にニーズが変わらないわけはありません。
一度確認したニーズに固執せず、常に変化しうるものと認識しながら確認して頂ければと思います。
まとめ
相談者が最初に訴える主訴は、その相談者が本当に必要としていること「そのもの」であることは意外と少なかったりします。主訴とニーズの違いを認識し、相談者の本当に必要にしていることにアプローチすることが大切です。
相談者が支援者との時間の中で自分の中のニーズに気づき、それに向けて支援者と一緒に歩んでいけたら嬉しく思います。