こどもの権利等を定めたこども基本法が令和4年6月15日国会で成立し、令和5年4月1日公布されます。
こども基本法はこどもの権利を保障する総合的な法律です。
児童虐待対応件数が20万件を超えて過去最高を記録している今、こどもの権利を明確にすることは非常に重要なことです。
障害がある無いに関わらずこどもの権利は保障されるものであり、障害児福祉サービスを提供する児童発達支援管理者も理解すべき内容です。
この記事ではこども基本法についてポイントを絞ってわかりやすく解説します。
国際条約「子どもの権利条約」には子どもの権利について4つの原則と4つの権利が示されています。
↓こちらで紹介しています。是非ご覧ください。
1.経緯
こどもの基本的人権を国際的に保証するために「児童の権利に関する条約(こどもの権利条約)」が1989年に国連総会で採択されました。
日本は子どもの権利条約に1994年批准しています。
批准とは、国が条約を承認すること。
批准をしたということは、条約の内容に沿って国の方針を定めるということです。
批准した際に、日本は新しくこどもの権利を明記した法律を作ることはしませんでした。
今ある法律でこどもの権利は守られているという考えだったからです。
こどもに関する法律は
・児童福祉法
・児童虐待防止法
・教育基本法
・少年法 等
いろいろありますがこどもを権利の主体として位置づけ、その権利が明記されている法律はありませんでした。
障害者には「障害者基本法」、女性には「男女共同参画社会基本法」という法律はあるにもかかわらずです。
そこで必要性が訴えられていたのがこども基本法です。
児童虐待防止法についてはこちら↓で解説しています。ぜひご覧ください。
2.目的
法律の目的は第1条に明記されています。
第1条
この法律は日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり、次代の社会を担う全てのこどもが、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して、社会全体としてこども施策に取り組むことができるよう、こども施策に関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにし、及びこども施策の基本となる事項を定めるとともに、こども政策推進会議を設置すること等により、こども施策を総合的に推進することを目的とする。
引用:こども基本法案
法律の条文なのでわかりにくいかと思いますが、わかりやすく言うと
こどもの権利が守られ、健やかに成長して幸せな生活を送ることが出来る社会であるために、基本的な考え方や国がやるべきことを明確にして、子ども施策を進める。
ということが法律の目的です。
3.定義
こども基本法で使われている「こども」「こども施策」という言葉の定義が示されています。
こどもは18歳という年齢で明確に区切ることはせず、心身の発達の過程にある者という定義になっています。
こども施策は成長に対する支援だけでなく、子育てに伴う喜びを実感できる社会を目指して、生まれる前からの支援や養育環境の整備も示されています。
4.基本理念
基本理念で6つのことが示されています。
どれも大切なことですが、「こどもの意見を表明する機会が確保される。意見が尊重される。」というこどもの意見表明権は特に重要です。
子どもの権利条約の中にはこどもの意思表明権について示されていますが、日本で作られたこどもに関する法律にはこどもの意思表明権についての明記はありませんでした。
今後のこども施策は、この基本理念を踏まえたうえで作られます。
こどもの支援や教育に携わる立場の方は理解しておくべき内容です。
5.基本的施策
こども基本法の中では基本的施策がいくつか示されています。
基本法ですので示されているのは具体的な取り組みというよりは、方向性と言えます。
こどもの課題は教育、保育、医療、福祉など他分野にまたがっており、支援には連携が欠かせません。
そういった意味では今後のこども家庭庁へ求められるものは大きいと思います。
6.子ども政策推進会議
こども基本法にはこども政策推進会議の設置が示されています。
【子ども政策推進会議が担うこと】
①大綱の案作成
②こども施策の重要事項の審議・こども施策の実施を推進
③関係行政機関相互の調整 など
大綱とは事柄の基本となるものを指し、こどもの権利を守る取り組みの指針のようなイメージです。
会の組織は内閣総理大臣が会長としておかれています。
委員はこども政策担当の内閣府特命担当大臣や内閣総理大臣が指定する大臣となっており、こども施策を考える重要な会議となります。
大綱の案を考える際にはこどもや保護者、こども支援に関する団体等の意見を反映させることも示されています。
まとめ
こども基本法は、総合的な法律なので国や都道府県の責務は示されていますが、具体的な取り組みなどが示されているわけではありません。
しかし、これまで日本の法律では明確にされていなかった意見表明権を含めたこどもの権利について示された法律です。
こどもの権利が明確に示され、こども家庭庁が創設されるこれからがこども施策にとって改めてのスタートと言えます。
将来を担う子供たちが健やかに成長できる社会になるために、私たち一人一人が自分にできることを考えていきましょう。
こどもの権利擁護についてはこちら↓もぜひご覧ください。