令和3年度都道府県・市区町村における障害者虐待事例への対応状況等(調査結果)が令和5年3月24日に公表されました。
この調査は障害者虐待防止法を受けて、各都道府県の対応等に関する状況を年度ごとに調査して公表するものです。
調査結果は「養護者による虐待」と「障害者福祉施設従事者等による虐待」の2つに分かれています。
この記事では福祉事業所スタッフ向けに「障害者福祉施設従事者等による虐待」の調査結果をご紹介いたします。
障害者虐待の現状をしっかりとご理解いただくために、ぜひご覧ください。
1.過去最多を更新
福祉施設従事者等による障害者虐待の推移です。
虐待件数の調査が始まってから基本的には右肩上がりに増えています。
令和3年度は
相談・通報件数 3,208件 虐待判断件数 699件 被虐待者数 956人
令和2年度と比較すると
相談・通報件数は12%増加 判断件数は11%増加 被虐待者数は7%増加
全ての数値で過去最多を更新しています。
相談通報件数に対する虐待判断件数の割合は、22%と令和2年度と変わらない数値となっています。
増え続けている虐待件数に歯止めをかけるためにも、国は虐待防止や身体拘束当適正化の推進のための取り組みを事業所に義務化しています。
2.虐待発生割合が高いのは障害者支援施設・グループホーム
こちらは福祉事業所従事者等による障害者虐待の細かなデータを示している資料です。
虐待者や被虐待者に関する数値は、令和2年度と大きな変化は見られませんでした。
資料の左下にある市町村等職員が判断した虐待の発生要因(複数回答)を令和元年度・令和2年度と比較してみると下記の通りです。
令和元年 | 令和2年度 | 令和3年度 | |
---|---|---|---|
教育・知識・介護技術等に関する問題 | 59.8% | 71% | 64.5% |
職員のストレスや感情コントロールの問題 | 55.3% | 56.8% | 54.8% |
倫理観や理念の欠如 | 53.6% | 56.1% | 50% |
虐待を助長する組織風土や職員間の関係性の悪さ | 16.2% | 22.6% | 22% |
人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ | 24.2% | 24.2% | 24.7% |
「教育・知識・介護技術等に関する問題」が令和元年度から最も多かったですが、他の要因との差は大きくなっています。
虐待が起こる要因として、障害がある方の行動に対してどのように対応していいかわからず力づくで押さえてしまうことが挙げられます。
そういった行為を防ぐために支援スキルの向上が必要です。
支援するスタッフが支援スキルが未熟なために虐待につながってしまう事実を重く受け止めなければなりません。
また、「虐待を助長する組織風土や職員間の関係性の悪さ」も少しですが増加しています。
虐待は組織で防止するものです。
不適切と思われる支援を指摘し合える関係性や、チームで統一した支援を提供できる組織を構築することがとても大切です。
福祉事業所における障害者虐待の主な要因と対策については↓こちらをご覧ください。
障害福祉の仕事に携わる上で必要な「理念」ついては↓こちらで触れています。
資料の下段中央にある障害者虐待の事実が認められた施設・事業所の種別を見てみると、生活全般を支援する障害者支援施設やグループホームの数値が高くなっています。
虐待の構成割合では
障害者支援施設 20.9% 共同生活援助(GH) 23.2%
この2つが20%を超えています。
生活をする施設は、外部から見られにくい事も虐待発生の要因の一つです。
また、スタッフと一緒に過ごす時間も長いことから、利用者との距離感が近くなるなど気持ちのゆるみ等も考えられます。
その他
生活介護 12.4% 就労継続支援B型 11.9% 放課後等デイサービス 13.6%
この3つが10%を超えています。
比較的障害が重い方が利用する事業だったり、サービスの質について課題となっているような事業種別かと思います。
自分たちの事業所の中で、虐待が発生するリスクを把握することが大切です。
まとめ
障害福祉事業所従事者による障害者虐待は残念ながら増え続けています。
虐待はある日突然起こるものではありません。
不適切な支援の継続、職員間のなれ合いなどが積み重なり虐待に至ります。
虐待を防ぐためには、チームで適切な支援を提供する為の取り組みを継続していくことが必要です。
「障害者虐待防止法」については↓こちらで解説しています。合わせてご覧ください。
「通報義務」については↓こちらで解説しています。合わせてご覧ください。
「障害者虐待の防止と対応の手引き」については↓こちらで解説しています。合わせてご覧ください。