障害という言葉から連想するイメージは人それぞれかと思いますが、条例や法律上では明確に障害について定義づけされております。
この記事では国際的な条約である障害者権利条約及び日本国内で定められている法律において、障害がどのように定義づけされているのかをご紹介させていただきます。
障害の定義について、それぞれの記載内容も見比べてみてください。
1.定義の記載
【障害者権利条約】
第一条
目的
この条約は、全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、 及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的とする。
障害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害であって、様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む。
引用:障害者権利条約
障害者権利条約については↓こちらで詳しく解説しています。
【障害者基本法】
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下
「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会
生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
二 社会的障壁 障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会におけ
る事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
引用:障害者基本法
【障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律】
(定義)
第四条 この法律において「障害者」とは、身体障害者福祉法第四条に規定する身体障害者、知的障害者福
祉法にいう知的障害者のうち十八歳以上である者及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第
五条第一項に規定する精神障害者(発達障害者支援法(平成十六年法律第百六十七号)第二条第二
項に規定する発達障害者を含み、知的障害者福祉法にいう知的障害者を除く。以下「精神障害者」
という。)のうち十八歳以上である者並びに治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病で
あって政令で定めるものによる障害の程度が主務大臣が定める程度である者であって十八歳以上で
あるものをいう。
2 この法律において「障害児」とは、児童福祉法第四条第二項に規定する障害児をいう。
3 この法律において「保護者」とは、児童福祉法第六条に規定する保護者をいう。
4 この法律において「障害支援区分」とは、障害者等の障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必
要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すものとして主務省令で定める区分をいう。
引用:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律
障害者総合支援法には、他の法律の定義を引っ張ってくる形で記載されています。
【身体障害者福祉法】
(身体障害者)
第四条 この法律において、「身体障害者」とは、別表に掲げる身体上の障害がある十八歳以上の者であつ
て、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。
別表(第四条、第十五条、第十六条関係)
一 次に掲げる視覚障害で、永続するもの
1 両眼の視力(万国式試視力表によつて測つたものをいい、屈折異常がある者については、矯正視力につ
いて測つたものをいう。以下同じ。)がそれぞれ〇・一以下のもの
2 一眼の視力が〇・〇二以下、他眼の視力が〇・六以下のもの
3 両眼の視野がそれぞれ一〇度以内のもの
4 両眼による視野の二分の一以上が欠けているもの
二 次に掲げる聴覚又は平衡機能の障害で、永続するもの
1 両耳の聴力レベルがそれぞれ七〇デシベル以上のもの
2 一耳の聴力レベルが九〇デシベル以上、他耳の聴力レベルが五〇デシベル以上のもの
3 両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が五〇パーセント以下のもの
4 平衡機能の著しい障害
三 次に掲げる音声機能、言語機能又はそしやく機能の障害
1 音声機能、言語機能又はそしやく機能の喪失
2 音声機能、言語機能又はそしやく機能の著しい障害で、永続するもの
四 次に掲げる肢体不自由
1 一上肢、一下肢又は体幹の機能の著しい障害で、永続するもの
2 一上肢のおや指を指骨間関節以上で欠くもの又はひとさし指を含めて一上肢の二指以上をそれぞれ第一
指骨間関節以上で欠くもの
3 一下肢をリスフラン関節以上で欠くもの
4 両下肢のすべての指を欠くもの
5 一上肢のおや指の機能の著しい障害又はひとさし指を含めて一上肢の三指以上の機能の著しい障害で、
永続するもの
6 1から5までに掲げるもののほか、その程度が1から5までに掲げる障害の程度以上であると認められ
る障害
五 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害その他政令で定める障害で、永続し、かつ、日常生活が著しい制
限を受ける程度であると認められるもの
引用:身体障害者福祉法
【知的障害者福祉法】
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百
二十三号)と相まつて、知的障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、知的障害者を
援助するとともに必要な保護を行い、もつて知的障害者の福祉を図ることを目的とする。
引用:知的障害者福祉法
知的障害者福祉法には、知的障害について具体的に定義されている記載はありませんでした。
【精神保健及び精神障害者福祉に関する法律】
(定義)
第五条 この法律で「精神障害者」とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的
障害その他の精神疾患を有する者をいう。
引用:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
【発達障害者支援法】
(定義)
第二条 この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学
習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢に
おいて発現するものとして政令で定めるものをいう。
2 この法律において「発達障害者」とは、発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日
常生活又は社会生活に制限を受けるものをいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満
のものをいう。
3 この法律において「社会的障壁」とは、発達障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で
障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
4 この法律において「発達支援」とは、発達障害者に対し、その心理機能の適正な発達を支援し、及び
円滑な社会生活を促進するため行う個々の発達障害者の特性に対応した医療的、福祉的及び教育的援
助をいう。
引用:発達障害者支援法
2.障害についての考え方
ここで障害者権利条約の前文に記載されている内容をご紹介します。
全文
(e)障害が発展する概念であることを認め、また、障害が、機能障害を有する者とこれらの者に対する態
度及び環境による障壁との間の相互作用であって、これらの者が他の者との平等を基礎として社会に
完全かつ効果的に参加することを妨げるものによって生ずることを認め、
引用:障害者権利条約
障害は発展する概念
発展するということはすなわち広がっていくこと、段階が移行するということ。
ここで言えば、障害というものは個人の心身の状況によるものという概念から発展して、個人の状況と社会的障壁との相互作用という概念になったということ。
わかりやすく言えば
足が不自由(車椅子で移動)=障害
ではなく
足が不自由(車椅子で移動)✕車椅子で通れない環境(段差や階段など)=障害
ということです。
↓こちらでは障害について医学モデルと社会モデルから解説しています。是非ご覧ください。
まとめ
条約や法律において定義されている「障害」をご紹介させていただきました。
障害者権利条約の他、日本国内の主な障害に関する法律内容をピックアップしましたが、
そもそも定義がされていない法律もあることに驚かれたのではないでしょうか?
障害者権利条約にもあるように、障害は個人の状況だけでなく社会的な障壁との相互作用から生じるものです。
その考えがすべての法律上においても明らかに示され、困っている方に制度やサービス等が適応しやすい仕組みづくりの根幹となることを願っています。