児童発達支援や放課後等デイサービスの数は増加していますが、一方で支援の質の課題なども挙げられています。
これまでも平成 26 年の「障害児支援の在り方に関する検討会」、令和3年の「障害児通所支援の在り方に関する検討会」で障害児通所支援については議論されてきました。
今までの検討会の方向性を踏まえつつ「障害児通所支援に関する検討会」が令和4年度に全11回開催され、令和5年3月に報告書が出されました。
児童発達支援センターの中核的な役割についてや、児童発達支援・放課後等デイサービスの支援内容についてなど幅広い内容が検討され、今後はこれらの議論内容の実現に向けた取り組みが進められていくことと思います。
報告書は29ページ程度と決して多くはありませんが、全て文章なので読み込むには時間もかかります。
報告書の概要もありますが、概要版だけでは細かい内容は理解しきれない点も多いです。
この記事では報告書のポイントを押さえて、僕なりに見やすく整理したものを使用して解説しています。
記事をご覧いただき今後の方向性を理解しましょう。
1.障害児通所支援の基本的な考え方
障害児通所支援の基本的な考え方3つが挙げられています。
基本的な考え方は平成26年の「障害児支援の在り方に関する検討会」、令和3年の「障害児通所支援の在り方に関する検討会」と同じ方向性を引き続き重視しています。
子どもの権利条約で示されたこどもの4つの権利についてや、障害児通所支援は子育て支援施策全体の一部ということなどが示されています。
こどもの権利については↓こちらをご覧ください。
2.児童発達支援センターを中心とした地域の体制整備
児童発達支援センターが地域の障害児通所支援の中心となるための4つの機能です。
地域に向けて発信したり、地域の事業所を活かす機能が多く求められています。
これまであいまいなところもあった、相談支援事業所と保育所等訪問支援の指定についても「有することが基本」と示されました。
支援スキルも地域の障害児通所事業所を支え、牽引できる存在が期待されます。
中核拠点型として整備を進めていくうえで気になる人員配置等についてですが、多くの役割を果たすために専門職の配置が重要と考えられています。
人材の雇用は福祉業界でも大きな課題となっている側面もあるので、配置について柔軟な対応がされるかは気になるところです。
同時に令和6年4月スタートではない段階的な取り組みも考えられていくようです。
体制整備についてはやはり行政の力が大切です。自立支援協議会を活用しながら福祉計画に落とし込んでいくことが必要です。
3.児童発達支援センターの一元化
児童発達支援センターの一元化についてですが、
医療型も福祉型も、今ある仕組みや得意分野は活かしつつ幅広い子どもと家族のニーズに対応できる体制が求められます。
人員基準の見直しや幅広い障害特性に応じた支援を行った際の評価も検討されていく方向です。
現状のセンターを把握しつつ地域の体制整備に活かすのは市町村の役割でもあります。
4.児童発達支援について
すべての児童発達支援においてガイドラインで示されている4つの役割割(本人支援・移行支援・家族支援・地域支援)と本人への5領域域(「健康・生活」、「運動・感覚」、「認知・行動」、「言語・コミ ュニケーション」、「人間関係・社会性」)をすべて含めた総合的な支援の提供が基本となります。
児童発達支援ガイドラインについては、↓こちらをご覧ください。
また、個別支援計画のフォーマットを今後ガイドラインで示すことを検討することが必要と示されており、5領域の支援が提供されているかを明確にすることが必要になります。
特定の領域に関する支援はアセスメントを踏まえて障害児支援利用計画や個別支援計画に位置付けるなど計画的な実施が必要です。
支援の質について課題となっていた点については、ピアノや絵画のみの支援はそれ自体の必要性は認めつつも児童発達支援という公費を使った支援としてはふさわしくないと示されています。
支援時間についても、長さに違いがみられているところですが評価の一部として見られていく方向です。
保護者への就労等への対応として、児童発達支援でも家族全体を支援するという観点から対応が必要とされています。
5領域の総合的な支援と、見守り要素が強い預かり的な支援を分けた評価の検討がされるようです。
5.放課後等デイサービスについて
放課後等デイサービスにおいても支援については4つの役割と5領域をすべて含めた支援が重要であり、現在ある放課後等デイサービスのガイドラインは改訂の必要があると示されています。
改訂される放デイガイドラインは幅広い年齢層や障害の多様性についても対応できるようきめ細やかな内容が求められます。
個別支援計画に5領域の支援のつながりを明確するためのフォーマットの作成も児童発達支援と同様です。
学童期・思春期は行動の課題が現れてきやすい時期です。強度行動障害の状態もこの時期になることが多いとデータで出ています。
それだけ大切な時期だからこそ、仲間形成・その子らしく過ごせる場・自分の生活のマネジメント・メンタルヘルスなど多様な視点での支援が求められます。
一貫した支援には個別支援計画と学校の教育支援計画の連携も必要です。
ピアノや絵画のみの指導、支援時間の長短、保護者の就労等への対応についてはおおむね児童発達支援と同様となっております。
放デイには不登校など学校に在籍していても継続的に学校に通学できない子どもに対して、休息でき、安心安全でその子らしく過ごせる場としての役割が求められています。
居宅訪問型児童発達支援は現在あまり広がってはいませんが、より必要なこどもが利用できるよう支援対応範囲の検討も考えられます。
学童期・思春期の子供を支援するうえで関係機関の連携は非常に重要であり、こども家庭庁・厚生労働省・文部科学省をはじめとした自治体の教育・福祉・医療等の行政が連携する体制の構築が強く望まれます。
6.インルージョンの推進
インルージョンの推進においても連携・協働が強く示されています。
障害児という枠ではなく、こどもという枠でこども施策全体で考えることが大切です。
インクルージョンの推進に大きな役割を担う保育所等訪問支援については、効果的に活用されているとは言えない現状があります。
今後は、支援内容や支援の過程なども考慮した報酬上の評価がなされていくようです。
個人的には、保育所等訪問支援の役割が十分に認識されるよう教育側への更なる周知をお願いしたいところです。
児発や放デイから保育所や児童クラブなどへの移行については、具体的な支援のプロセスや考え方をガイドラインで示す方向です。
移行については福祉だけではなく移行先も含めたきめ細かいやり取りが必要です。
こどものよりより良い生活のための支援は当然としても、子どもが移行した際の児発や放デイにおける運営上の課題という矛盾が足かせになることも考えていかなければいけないことの1つかと思います。
7.障害児通所支援の給付決定等について
給付決定については、現在の調査が介助の有無や行動障害等の課題のみを把握する内容となっています。
そのため、6領域 20 項目(思春期は7領域 23 項目)を参考に新たな調査指標について検討を進める方向です。
支給決定プロセスにはより丁寧に状況を把握することが求められます。
こどもの状態は保護者の状態や養育環境などの影響も非常に大きいです。
必要な支援を判断するためには、保護者の状態や地域資源とのつながり等丁寧に把握することが大切です。
同時に市町村による判断のバラつきが無い体制も求められます。
支給決定に大きく関わるのが障害児相談支援の存在です。
現状は相談支援の数が足りずにセルフプランが多くなってしまっています。
相談支援の質と量の確保のための取り組みと合わせて、適切にコーディネートが行われる方策の検討が必要です。
8.障害児通所支援の質の向上について
障害児通所支援の質の向上については様々な視点での取り組みが示されています。
支援についてはガイドライン等でも明確化されていくと思われます。
児童発達支援センターも重要な役割を担うこととなります。
質の向上はすぐに達成できる目標ではありませんが、なにより地域が一体となって取り組むことが必要です。
行政・教育・保育・児発センター・事業所それぞれがこどもと家族のウェルビーイングの向上を目標に連携していくことが大切だと思います。
自立支援協議会等を中心に自分たちの地域はどうあるべきかを考えてみてください。
まとめ
今回の検討会では児童発達支援センターの中核的な機能や児発や放デイの支援内容などについて方向性が示されました。
児童発達支援、放課後等デイサービス事業所は自らの役割を理解して事業を運営していくことが求められます。
また令和5年4月からこども家庭庁も創設され、障害児支援も子育て支援と一体的に行っていくようになります。
障害があっても無くても健やかに育てる社会であるために、分野を超えた検討と取り組みが必要です。