子ども家庭局が「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」を立ち上げ、2021年3月から5月にかけて全4回の話し合いがされてきました。
その報告が2021年7月8日に厚労省のHPにupされましたのでご紹介するとともに、僕なりにわかりやすく解説させていただきます。
ヤングケアラーについて「何だろう?」という方はこちら↓の記事で解説していますので、ご覧ください。
1.プロジェクトチーム立上げの背景
ヤングケアラーについては、福祉、介護、医療、教育等といった様々な分野が連携し、ヤングケアラーを早期に発見した上で支援を行うことが重要である。 そこで、関係機関の連携をより一層推進し、ヤングケアラーの支援につなげるための方策について、厚生労働省及び文部科学省が連携し、検討を進めるため、「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」を立ち上げた。
引用:ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の 連携プロジェクトチーム報告
プロジェクトチーム立上げの背景は上記に示された通りです。
ヤングケアラーに対して「発見」も「支援」も福祉、介護、医療、教育の連携が重要です。
2.厚生労働省・文部科学省として今後取り組むべき施策について
a.早期発見・把握について
立上げの背景にも「早期に発見した上で支援を行うことが重要」と記載されている通り、家庭内というプライベートな部分であることや、子ども自身が自覚しにくいという点もあり、とても見つけにくいです。
学校においてヤングケアラーを把握する取組
学校の先生は子どもと接する機会が多く、変化に気付きやすい立場にあります。しかし先生方がヤングケアラーについて充分に知っているかというとまだまだでもあります。ヤングケアラーについて理解が深まれば、子どもや保護者と接する中で気付きやすくなります。
また、学校だけじゃなく関係機関と情報共有などをすることが地域全体で子どもを見守ることにもつながります。
もちろん子ども自身が家庭について知られたくないという気持ちについても配慮が必要です。
医療機関・福祉事業者の関わりがある場合に、ヤングケアラーを把握する取組
ヤングケアラーは在宅にいる支援が必要な方に対して支援していることも多いため、支援の対象者が医療や介護、福祉等の支援事業所につながっていることもあります。
そのため、ヤングケアラーを早期に発見するためには、医療や介護、福祉のスタッフがヤングケアラーについて理解を深めることが必要です。
児童委員や子ども食堂など地域や民間の目でヤングケアラーを把握する取組
学校に通えていなかったり福祉や介護とつながっておらず、家族以外の接触の無いヤングケアラーは、特に見つけにくいため、児童委員や子ども食堂など地域にいる大人が見つけることも大切です。
地方自治体における現状把握の推進
ヤングケアラーについては国で調査を行いましたが、もっと身近な市町村単位で実態を知るための調査が必要です。
b.支援策の推進
早期発見・把握した子どもを適切な支援につなげるために
ピアサポート等の悩み相談や、福祉サービスへのつなぎなど相談支援の推進
悩み相談の支援
周りの大人からの気付きと同じくらい、子どもから相談できることは大切です。
国が行った調査報告書の中でも話を聞いてほしい子どもは一定数居ることがわかります。
子どもの相談先としては市役所などの公的機関はハードルが高いです。
福祉サービスへのつなぎ
適切な支援につなぐために、どこに相談したら良いかを明確にしておくことが必要です。そのため包括的な支援体制の整備をすすめるとともに、多機関連携のモデル事業を行ってマニュアル化するといった取り組みが必要です。
また、ヤングケアラーが自立するための就労支援等を行うハローワーク等とも連携が求められます。
スクールソーシャルワーカー等を活用した教育相談体制の充実や、NPO等と連携した学習支援の推進
学校の役割として、子どもの状態に気付きやすいだけでなく学習についてのサポートという点もあります。先程お見せした調査報告書の「学校や大人に助けてほしいこと」でも学校の勉強や受験勉強など学習のサポートについての希望もあったように、家族を支援する中で勉強に手が回らない面も見られます。
ヤングケアラーが子どもであることを踏まえた適切な福祉サービス等の運用の検討
子どもらしい生活が出来るためには、家庭を支援する視点が必要です。
支援の対象者が福祉や介護につながっていても、中高生の子どもが介護等の役割を担う一員としてみられてしまうこともあります。
幼いきょうだいをケアするヤングケアラーへの支援
調査報告書によると、世話を必要としている家族はきょうだいが一番多いです。さらにきょうだいの状況としては「幼い」が多くなっており、親に代わって小さいきょうだいを見る必要がある事がわかります。
3.社会的認知度の向上
国はヤングケアラーの認知度はまだまだ低いため、中高生の認知度を50%に引き上げることを目標に、2022年度から3年間を集中取組期間としてヤングケアラー認知度向上キャンペーン(仮称)を実施すると示しています。
(※周知する中で「ヤングケアラー=悪いこと」というメッセージにならないように注意が必要。)
まとめ
ポイントを絞って解説させていただきましたが、けっこうなボリュームになってしまいました。
それだけ幅広い取り組みが必要ということかと思います。
まだまだ認知が低いヤングケアラーですが、その支援には「ヤングケアラーについて知ること」そして、「教育や福祉等が子どもや家庭を支援するために枠にとらわれない連携体制」が必要です。
私達に出来ること、ヤングケアラーについて知るところから始めませんか?
厚労省令和3年度子ども・子育て支援推進調査研究事業をうけ有限責任監査法人トーマツが「他機関連携によるヤングケアラーへの支援の在り方に関する調査研究」を実施しました。この事業の中で、多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援マニュアル~ケアを担う子供を地域で支えるために~」(以下 マニュアル)が作成されました。支援のポイントや支援の基盤づくりが記載されています。
是非こちら↓の記事でマニュアルのポイントを押さえていただき、支援の必要性や支援方法についてもご理解いただければと思います。
おすすめ書籍
ヤングケアラーの実態を知る、当事者の思いを知るにはピッタリの本↓です。ぜひご覧ください。
ヤングケアラーについて、もっと知ってもらうことで子どもが健やかに成長できる社会に近づくことを期待しています。
国の取り組み
教育委員会の教育相談担当者等を対象とした研修の実施。
各地方自治体において教育委員会と福祉・介護・医療の部局とが合同で研修。