福祉事業所において個別支援計画の作成は最も重要な業務の1つですが、
個別支援計画の作成が難しい・・・
計画を作成するときのポイントを知りたい
そんな思いはありませんか?
サビ管・児発管になるための研修で計画作成のプロセスを学び、事業所で個別支援計画を作成しても、本当にこれでいいのか?と悩むことも多いかと思います。
20年以上福祉サービスに携わり、サビ管・児発管研修の講師も経験した僕なりに個別支援計画作成のポイントをまとめてご紹介します。
基本的にはサビ管・児発管向けですが、手順や作成例もご紹介しますので支援に関わっているスタッフにも十分に役立つ内容かと思います。
ポイントを押さえて本人も支援者もワクワクする計画を作成しましょう。
児発や放デイの個別支援計画については↓こちらで記載例も含めご紹介しています。合わせてご覧ください。
個別支援計画をなぜ作成するのかについては↓こちらで解説しています。ぜひご覧ください。
1.正しい手順を踏む
個別支援計画の作成には手順があり、その手順を踏んで作成することが求められます。
こちらの資料は障害児支援についての資料ですが、手順は成人でも児童でも変わりません。
相談支援事業所と連動した支援提供についても十分意識していただくことが必要ですが、
事業所の支援提供までの手順は資料の下の部分になります。
手順に沿って作成されているかは、事業所への実地指導でも細かくみられる部分です。
そのため会議の記録等についてもきちんと残しておく必要があります。
まずは正しい手順を踏んで計画を作成することを心がけましょう。
個別支援計画のモニタリングについて↓こちらで紹介しています。是非ご覧ください。
2.アセスメントが大切
計画を立てるときに大切なことは、しっかりとアセスメントを行い本人を知ることです。
アセスメントをせず計画を立てることは、現在地がどこかもわからずに目的に到着するにはどうしたらいい?と考えているようなものです。
本人はどんな思いをもっているのか?
ニーズは?
周りの環境は?
強みと弱みは?
どんな人生を歩んできたのか?
特性は?
上記はあくまで一例ですが、それらは計画を作る上で欠かせない情報です。
アセスメントがあって初めて、計画が作成できることを忘れないでください。
3.誰のための計画かを間違えない
①ニーズ
福祉サービスを利用するということは、必ずそこに本人や家族のニーズがあります。
支援者はニーズを中心に支援することが大切ですが、支援をする中でいつの間にか支援の方向性が本人のニーズではなく、支援者の「こうなってほしいという想い」になってしまうことがあります。
例えば
生活介護を利用している方がいて、本人や家族からは余暇を増やしたいという希望がある。しかし、支援者が本人を見ているうちに家事など出来たら自立につながると思って、家事スキル習得のための支援を中心にする。
こんなケースがあったらどうでしょうか?
支援をする中で支援者が本人のストレングスや特性を見て、支援の方向性を見出すことはとても大切なことであり、支援者の役割と言えます。
しかし支援者が見出した方向性をそのまま支援の中心に据えるかどうかは話が別です。
このケースで言えば、支援者が感じた気づきを本人や保護者に伝え、余暇に加えて家事スキルを向上させることで本人や家族の生活にどんな変化があるかを伝えて、支援の方向性に理解をいただいた上で変更するという流れが必要です。
私たち支援者が行うべきは、本人のニーズに基づいた支援であり、支援者が描く本人像に向けた支援ではありません。
計画の内容が支援者の押し付けになっていないか常に確認しましょう。
ニーズについてはこちら↓でも解説していますのでご覧ください。
②エンパワメント
計画を作成する上で大切にしたい考えの1つがエンパワメントです。
エンパワメントは簡単に言うと
社会的に不利な状況におかれて自分の力を発揮できていない方に対して、その方の強みに着目して力を発揮できるように支援する
ということです。
自転車で例えると支援者は補助輪の役割で、前に進むためにペダルを踏むのは本人です。
本人には前に進む力があると信じて、その力を発揮できるように支援することが大切です。
エンパワメントについてはこちら↓でも詳しく解説していますのでご覧ください。
③本人と家族の思いのズレ
本人が自らの意思を伝えることが苦手、もしくは児童の場合には家族の意向が全面に出てきます。
それは当然のことなのですが、支援者が支援をする上で認識する本人のニーズと家族のニーズがズレていることは往々にしてあるものです。
計画を作成する際にも悩みどころですが、本人と家族どちらかのニーズだけを受け止めてどちらかのニーズには知らんぷりといった対応はできません。
どちらのニーズに対してもまずは受け止め、支援者としての視点を混ぜて本人や家族と支援の方向性についてすり合わせを行う。
その繰り返ししかないと思います。
私たちは本人に対して支援を行いますが、一緒に生活をしていたり育ててきた立場としての家族の意見はとても大切なものです。
支援には家族支援も含まれます。双方の想いを大切に支援をしていくことが大切かと思います。
④サービス等利用計画とのつながり
「正しい手順を踏む」のところでご紹介した資料の通り、相談支援専門員が作成するサービス等利用計画とサビ管・児発管が作る個別支援計画は深い関係があります。
それは
サービス等利用計画←細かい部分を理解して、全体の支援をプランニングする
個別支援計画←全体の支援を理解して、事業所内での具体的な支援を明確化する
というように全体を見るか部分を見るかの違いがありますが、同じ1人の人を見ているからです。
この2つはお互いを理解して連動していることが必須であり、連動していないと本人のニーズの実現にはつながりません。
相談支援専門員とサビ管・児発管は役割の違いはあれど、立場的な上下はありません。
共に同じ人を支援する仲間でありチームの一員です。
意見を交換しながら、本人にとってより良い支援を目指しましょう。
4.その目標はワクワクする?
計画は達成するために立てるもので、達成するためには意欲(モチベーション)が大切です。
もしあなたが、痩せたいと思ったとき
A「10キロ痩せる」
B「痩せて大好きなモデルと同じ服を着る」
どちらの目標に意欲が湧くでしょうか?
ワクワクする目標は嫌なことは避けて楽しいことだけを計画に盛り込むということではありません。
前に進むための計画だから本人の頑張りも必要です。
しかしその目標をポジティブにしようということです。
他者にやらされていると思うより、自分がやりたいと思うことが大切です。
支援する側も、幸せを感じるイメージをつかみやすい目標のほうが支援する意欲がわきます。
「料理を1品作れるようになる」→「好きな人に好きな料理を作ってあげる」
「毎月20万円稼ぐ」→「オシャレな部屋に住む」
など上記はあくまで例えですが、
目指すべき方向性はズラさずに、本人も支援者も思わずワクワクするような目標を立てることが、きっと前に進む力になると思います。
5.PDCAサイクルを意識して作成する
①「やってみよう」も大切
人が作る計画に完璧なものはありません。
もちろん支援をスタートする上で準備をしてその時の最善と思われる計画を立てますが、それでも「やってみないとわからない」ことは多いです。
実施に際して丁寧に考えることは大切ですが、慎重になりすぎて結果的に取り組みのスタートが遅れてしまうことでマイナスになってしまうこともあります。
本人の思いに沿った支援であれば「やってみよう」と踏み出すことも大切です。
心配なら振り返りまでの期間を短くすればいいだけです。
考えて、やってみて、振り返って、見直す。
このサイクルを忘れないようにしましょう。
②生活やニーズは変化する
生活する中で本人の周りの環境や生活も変化します。
変化することが当たり前で、変わらないものなんてありません。
児発管の立場で言えば、幼稚園から小学校、中学校、高校等への進学は大きな変化です。当然それらを考えながら計画を立てると思いますが、他にも兄弟が生まれたり通常クラスから特別支援学級へ変わるということも考えられます。
成人になってからも、好きな人ができたり、保護者との別れなどターニングポイントはいくつもあります。
環境等に変化があればもちろん本人のニーズも変わり、計画も変更が必要です。
作成した計画に固執するのではなく、本人の人生に寄り添いながら柔軟に変化していくという気持ちが必要かと思います。
③具体的な目標や支援内容にする
目標は達成するために立てるもので、達成できたかどうかでその後の支援方法は変わります。
ですので、目標を立てるときには達成できたかどうかを判断しやすい具体的な目標や支援内容にすることが大切です。
例えば、「作業に慣れる」という目標だったとき半年後の見直しをしたときの判断はしやすいでしょうか?
慣れるという言葉のイメージは人によって違いがあるものです。
本人が慣れたと言えばOK?周りから見たら全く慣れた様子が見られなくても?
達成したかどうかを判断しやすくするためには具体的な数字などを盛り込んだ目標が有効です。
「作業に慣れる」ではなく「週に3回以上作業に取り組めている」
とすることで、2回だったら未達成、3回だったら達成になります。
もちろん作業の際の様子なども含めて考える必要はありますが、それは次のステップとして考えてもいいことです。
PDCAサイクルを回すために、判断しやすい目標設定を心掛けましょう。
④達成が大事だからスモールステップ
先程も言いましたが、目標は達成するために立てるものです。
達成できそうもない目標を立てる人はいませんよね。
目標を達成することで、自信を得て次のステップに進めます。
本人も支援者も一歩一歩前に進んでいるという実感が大切です。
つまり、目標を考える際にはスモールステップが大切です。
階段の段差を低くするように、小さいステップを積み重ねられるよう
東京から大阪への旅で例えるなら
東京からいきなり大阪を目指すのではなく、神奈川、静岡、愛知と少しずつ距離を伸ばして行くことが大切です。
6.わかりやすく伝える
個別支援計画は本人のための計画なので、アセスメントを取った支援者が計画を立てて終了ではありません。
本人に同意をもらって初めてスタートできます。
本人の想いを聞いて作った本人のための計画を、本人が理解すべきであるのは当たり前ですよね。
そのためにはできるだけ本人にわかりやすく伝えることが必要です。
具体的には、専門用語や難しい言い回しなどを出来るだけ避けて計画を作成することが大切です。
文字では理解しにくい場合は写真や絵などを使用してお伝えするのも良いかと思います。
本人に伝えることが目的なので形にこだわる必要はありません。
個別支援計画は他事業所や関係機関と共有することもありますので、通常の個別支援計画の様式と本人説明用の計画の2つを用意することも有効かと思います。
7.プロとしての学び
支援の方向性を検討するためには、障害特性の理解や構造化、氷山モデルなどの知識やスキルの学びも大切です。
支援でお金をもらっている以上、支援者はプロです。
プロの仕事は想いだけでは成り立ちません。
サビ管・児発管になるための法定研修では障害特性や構造化などに触れることはほぼありません。
個別支援計画作成のプロセスやチームづくりなど、限られた時間で伝えるべきことが山程あるからです。
サビ管・児発管に求められているものは多岐にわたっているので常に自己研鑽が必要です。
また、自己研鑽には他事業所とのつながりも大切です。
自らの支援を見つめなおすためにも切磋琢磨できる同業者の存在はとても貴重です。
積極的に他事業所とのつながりを持って、多くの刺激を受けることで必ず支援の質も向上します。
プロとして本人の思いを実現するために必要な知識とスキルの習得に努めて、計画をブラッシュアップしていきましょう。
まとめ
個別支援計画を作成する際の大切なポイントについてご紹介させていただきました。
個別支援計画は事業所で行う支援の根本となるものです。
紹介した中で大切だと感じたポイントがありましたら、計画について事業所の中でスタッフと話し合ってみてください。
きっと完成する計画に変化があると思います。
最後に参考として厚労省の資料に掲載されていた個別支援計画をご紹介します。
こちらは厚労省等の資料に載っていたもので、あくまで参考です。各事業所で目の前の本人にあった計画を考えましょう。