平成27年4月に出された放課後等デイサービスガイドライン(以下:放デイガイドライン)が、令和6年7月に改訂されました。
平成24年の児童福祉法の改正によって障害児通所支援として位置づけられた放課後等デイサービスは、事業所の増加に伴い支援内容についての指摘も多くみられることとなりました。
放デイガイドラインにはこども施策全体の基本理念を踏まえ、支援内容や方法など基本的事項について示されています。
この記事では放デイガイドラインの1~5章までを、児童発達支援ガイドライン(以下:児発ガイドライン)と違いも含めて、わかりやすく解説します。
同じく出された「児童発達支援ガイドライン」・「保育所等訪問支援ガイドライン」についても別の記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。
児童発達支援ガイドライン
保育所等訪問支援ガイドライン
第1章 総論
1.ガイドラインの目的
- 放デイで質の高い支援を提供するため、支援の内容や運営等関連する事項を定める。
- 放デイ事業所はガイドラインの内容を踏まえ、こどもや家族、地域の実業に応じて創意工夫をはかって支援の向上を図らないといけない。
- ガイドラインの内容を踏まえ、こども施策の基本理念にのっとって、障害のあるなしに関わらず権利行使の主体であるこども自身がウェルビーイングを主体的に実現していく視点を持って支援する。
ポイントをまとめて記載すると上記の通りです。
ガイドラインの目的は児童発達支援と変わらない内容となっています。
2.こども施策の基本理念
障害のあるなしに関係ない、こども施策の基本理念について記載されています。
<こども施策の基本理念>
○ 全てのこどもは大切にされ、基本的な人権が守られ、差別されないこと。
- 全てのこどもについて、個人として尊重され、その基本的人権が保障されるとともに、差別的取扱いを受けることがないようにすること。
○ 全てのこどもは、大事に育てられ、生活が守られ、愛され、保護される権利が守られ、平等に教育を受けられること。
- 全てのこどもについて、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され保護されること、その健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉に 係る権利が等しく保障されるとともに、教育基本法の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること。
○ 年齢や発達の程度により、自分に直接関係することに意見を言えたり、社会の様々な活動に参加できること。
- 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること。
○ 全てのこどもは年齢や発達の程度に応じて、意見が尊重され、こどもの今とこれからにとって最もよいことが優先して考えられること。
- 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること。
○ 子育ては家庭を基本としながら、そのサポートが十分に行われ、家庭で育つことが難しいこどもも、家庭と同様の環境が確保されること。
- こどもの養育については、家庭を基本として行われ、父母その他の保護者が第一義的責任を有するとの認識の下、これらの者に対してこどもの養育に関し十分な支援を行うとともに、家庭での養育が困難なこどもにはできる限り家庭と同様の養育環境を確保することにより、こどもが心身ともに健やかに育成されるようにすること。
○ 家庭や子育てに夢を持ち、喜びを感じられる社会をつくること。
- 家庭や子育てに夢を持ち、子育てに伴う喜びを実感できる社会環境を整備すること。
引用:放課後等デイサービスガイドライン(令和6年7月)
その他にも
こどもの権利条約
障害者の権利に関する条約
にも触れており、障害児支援に携わる者はこども施策・障害者施策の基本理念をしっかりと理解することが求められています。
また、児発ガイドラインには乳幼児期を意識して「はじめの100ヵ月の育ちビジョン」が記載されています。
放デイガイドラインは「こどもまんなか」の居場所づくりを実現するため「こどもの居場所づくりに関する指針」の内容を理解することと示されています。
「はじめの100ヵ月の育ちビジョン」
「こどもの居場所づくりに関する指針」
さらに、障害の有無にかかわらず「誰一人取り残さず、抜け落ちることのない支援」を重要視して、子どもが権利の主体であることやこどもの意見を表明する機会等の取り組みが求められています。
3.障害児支援の基本理念
大きくまとめると
- 合理的配慮の提供
- 切れ目ない支援として、子育て施策全体の連続性の中で、「面」で支えていく
- こどもと家族のウェルビーイング
- エンパワメントを前提とした支援
これらの内容が強く示されています。
第2章 放課後等デイサービスの全体像
1.定義
児童福祉法における放デイの規定が記載されています。
<児童福祉法>
○ 放課後等デイサービスとは、学校教育法第1条に規定する学校(幼稚園及び大学を除く。)又は専修学校等(同法第124条に規定する専修学校及び同法第134条第1項に規定する各種学校をいう。以下同じ。)に就学している障害児(専修学校等に就学している障害児にあっては、その福祉の増進を図るため、授業の終了後又は休業日における支援の必要があると市町村長(特別区の区長を含む。)が認める者に限る。)につき、授業の終了後又は休業日に児童発達支援センターその他の内閣府令で定める施設に通わせ、生活能力の向上のために必要な支援、社会との交流の促進その他の便宜を供与することをいう(第6条の2の2第3項)。
引用:放課後等デイサービスガイドライン(令和6年7月)
2.役割
個々の障害の状態や発達の状況、障害の特性等に応じた発達上のニーズに合わせて支援する「本人支援」
こどもの発達の基盤となる家族への「家族支援」
地域の保育、教育等を受けられるように支援する「移行支援」
こどもや家族を包括的に支援していく「地域支援・地域連携」
これらが示されています。
児発ガイドラインとの相違点として、「学校との連携」、「放課後児童クラブとの併行利用」、「地域の一員としての地域の社会活動への参加」が記載されています。
3.放課後等デイサービスの原則
(1)放課後等デイサービスの目標
- 生きる力の育成とこどもの育ちの充実
- 家族への支援を通じたこどもの暮らしや育ちの安定
- こどもと地域のつながりの実現
- 地域で安心して暮らすことが出来る基盤づくりの推進
4点が挙げられています。
児発ガイドラインとの違いは、①生きる力の育成と子どもの育ちの充実の部分で
「一人一人の人間性の成長に目を向け、生きる力や自立支援を育てて行くとともに将来の後どもの発達・成長の姿を見通す」といった内容が追記されています。
児発は同じ個所で安定したアタッチメントの形成について記載されています。
②~④については保育所や幼稚園の部分が、学校や放課後児童クラブになっているぐらいの変化です。
(2)放課後等デイサービスの方法
- 心も体も大きく成長する時期の小学生から高校生までの幅広い年齢層のこどもが対象であること
- 放デイを利用する全てのこどもをありのままに受け止めて、こどもが自分らしく過ごせる場であるという安全安心の土台の上で総合的な支援を提供することが基本
- 5領域の視点を踏まえたアセスメントをおこなってオーダーメイドの支援
これらの内容が示されています。
総合的な支援=本人支援の5領域の視点等を踏まえたアセスメントを行った上で、生活や遊び等の中で、5領域の視点を網羅した個々のこどもに応じたオーダーメイドの支援
また留意点として①~⑫まで挙げられています。以下に要点を記載します。
①適切なアセスメントを実施して、こどもが安心感と信頼感を持って活動出来るよう、こどもの主体としての想いや願いを受け止める。
②こどもの生活リズムを大切に安全で自己を十分に発揮できる環境を整える。
③こどもの発達や障害特性を理解し、個別や集団における活動を通して支援する。
④こどもの互いに尊重する心を大切にして、集団活動を効果あるものにするよう援助する。
⑤こどもが自発的、意欲的に関われるような環境を構成し、こどもの主体的なこども相互のかかわりを大切にする。
⑥遊びを通して適切に職員が関わり、豊かな感性や表現する力を養えるよう支援を行う。
⑦単に運動機能や検査上に表される知的能力に留まらず「育つ上での自信や意欲」等も踏まえ、可能性を広げることや、苦手に挑戦できる支援を行う。
⑧こどもが他者との信頼関係の形成を経験できることが必要なため、仲間と共に過ごすことの楽しさ等を味わうことでコミュニケーションをとることの楽しさを感じられるよう支援する。
⑨児童期から青年期は、年齢と共にニーズが変化したり、二次障害やメンタルヘルスの課題を抱えたり等、様々な課題に直面し、人格を形成していく時期なので自尊感情や自己効力感を育むことが出来るよう支援する。
⑩こどもが自尊感情や自己効力感を育むベースとなるのは保護者や家庭生活。保護者の状況や移行を受容して、それぞれの関係性等に配慮しながら適切に援助する。
⑪こどもの育ちと個別のニーズを共に保証した上で、インクルージョンの推進の観点を常に頭において地域とのつながりを意識して支援する。
⑫こどもや家庭を包括的に支援していくため事業所でこどものニーズを多方面から総合的に捉え、チームアプローチによる支援を行うと共に、地域の関係機関との連携体制を構築する。
①~⑦ ⑩~⑫の内容は児発ガイドラインと同様です。
⑧⑨の記載が放デイのみの記載となっています。
(3)放課後等デイサービスの環境
内容は児発ガイドラインと同様となっています。
環境については人的環境、物的環境、自然や社会の事象等の環境を考慮することが示されています。
留意点で示されている内容をポイントを絞って、以下に記載します。
- こどもが自ら環境に関わり、興味関心を広げ、こどもによる選択ができるよう配慮する。
- こどもが安心安全に過ごせるよう、事業所の衛生管理や安全確保に努める。
- 空間は温かで、くつろげる場となるようにすると共に、構造化等を行って生き生きと活動できる場となるように配慮する。
- こども自らが周囲のこどもや大人と関わることが出来る環境を整える。
(4)放デイの社会的責任
こちらも内容は児発ガイドラインと同様となっています。
- 障害の有無にかかわらずこどもの人権に十分配慮し、人格や意見を尊重して支援を行わなければならない。
- 家族の意向を受け止め、家族に対し支援内容を適切に説明し、相談等に対して適切に対応しなければならない。
- 地域社会との交流や連携を図って、事業所の支援内容等の情報を適切に発信しなければならない。
- 計画に基づいて提供される支援内容や役割分担を定期的に点検し、質の向上を図るとともにこどもが安心できるよう安全管理対策を講じなければならない。
- 通所する子どもやその家族の個人情報を適切に取り扱わなければならない。
管理者や児発管だけでなく支援を提供するスタッフもしっかりと理解しておきたい内容です。
第3章 放課後等デイサービスの提供すべき支援の具体的内容
1.放課後等デイサービスの提供にあたっての留意事項
放課後児童クラブとの併行利用等の連携のためにも
▶放課後児童クラブ運営指針の「育成支援(放課後児童クラブにおけるこどもの健全な育成と遊び及び生活支援)の内容」
▶特別支援学校小学部・中学部学習指導要領
▶特別支援学校高等部学習指導要領
これらについて理解が求められています。
また、放課後児童クラブの運営指針を参考に
- おおむね6~8歳(小学校低学年)
- おおむね9~10歳(小学校中学年)
- おおむね11~12歳(小学校高学年)
- おおむね13歳以降(思春期)
目安として4つの区分に分けて留意点が記載されています。
(1)おおむね6歳~8歳(小学校低学年)
○ こどもは学校生活の中で、読み書きや計算の基本的技能を習得し、日常生活に必要な概念を学習し、係や当番等の社会的役割を担う中で、自らの成長を自覚していく。一方で、同時にまだ解決できない課題にも直面し、他者と自己とを比較し、葛藤も経験する。
○ 遊び自体の楽しさの一致によって群れ集う集団構成が変化し、そこから仲間関係や友達関係に発展することがある。ただし、遊びへの参加がその時の気分に大きく影響されるなど、幼児的な発達の特徴も残している。
○ ものや人に対する興味が広がり、遊びの種類も多様になっていき、好奇心や興味が先に立って行動することが多い。
○ 大人に見守られることで、努力し、課題を達成し、自信を深めていくことができる。その後の時期と比べると、大人の評価に依存した時期である。
(2)おおむね9歳~10歳(小学校中学年)
○ 論理的な思考や抽象的な言語を用いた思考が始まる。道徳的な判断も、結果だけに注目するのではなく、動機を考慮し始める。また、お金の役割等の社会の仕組みについても理解し始める。
○ 遊びに必要な身体的技能がより高まる。
○ 同年代の集団や仲間を好み、大人に頼らずに活動しようとする。他者の視線や評価に一層敏感になる。
○ 言語や思考、人格等のこどもの発達諸領域における質的変化として表れる「9、10歳の節」と呼ばれる大きな変化を伴っており、特有の内面的な葛藤がもたらされる。この時期に自己の多様な可能性を確信することは、発達上重要なことである。
(3)おおむね11歳~12歳(小学校高学年)
○ 学校内外の生活を通じて、様々な知識が広がっていく。また、自らの得意不得意を知るようになる。
○ 日常生活に必要な様々な概念を理解し、ある程度、計画性のある生活を営めるようになる。
○ 大人から一層自立的になり、少人数の仲間で「秘密の世界」を共有する。友情が芽生え、個人的な関係を大切にするようになる。
○ 身体面において第2次性徴が見られ、思春期・青年期の発達的特徴が芽生える。しかし、性的発達には個人差が大きく、身体的発育に心理的発達が伴わない場合もある。
○ 個々のこどもの性的な発達段階や性への興味・関心に応じ、心や身体の発育や発達に関して正しく理解することができるよう、性に関して学ぶ機会を多く作ることが重要である。
(4)おおむね13歳以降(思春期)
○ 思春期は、こどもから大人へと心身ともに変化していく大切な時期であり、第二次性徴などの身体的変化や精神的変化に戸惑いを感じる時期である。こうした戸惑いと親からの自立を目指した一連の動きは、反抗的あるいは攻撃的な態度として表れることも多く、家族を含め周囲の大人の対応によっては情緒的・精神的に不安定となる危険性がある。
○ この時期、共通の立場にある仲間とお互いに共感し心を通じ合わせることで、危機を乗り越えていくことも可能となる。
○ 一方で、同じ年齢や同性の仲間との間に生じるストレスや心理的ショックなどが「劣等感」となって定着してしまうこともある。
○ 思春期前に培われた自己有能感を基盤として、大人とだけではなく仲間との関係性も重視し、進学や就労など次のステージに向かう力が生まれるようにサポートすることが求められる。
○ 個々のこどもの性的な発達段階や性への興味・関心に応じ、心や身体の発育や発達に関する正しい理解をもとに適切な行動をとることができるよう、性に関して学ぶ機会を多く作ることが重要である。
引用:放課後等デイサービスガイドライン(令和6年7月)
2.放課後等デイサービスの内容
(1)本人支援
5領域の支援について詳しい内容は⇨こちらで解説しているのでご確認ください。
尚、こちらの内容は児発ガイドラインの内容を解説していますので、児発ガイドラインと放デイガイドラインの違いについて補足させていただきます。
放デイガイドラインには学齢期の2次障害やメンタルヘルスの課題を抱える場合もあるから、自尊感情や自己効力感を育むことの大切さについて再度記載されています。
本人支援の目標としては
「こどもが様々な遊びや学び、多様な体験活動を通じて生きる力を育むとともに、将来、日常生活や社会生活を円滑に営めるようにするもの」と示されています。
(ア)健康・生活
生活におけるマネジメントスキルの育成が追加されています。
<生活におけるマネジメントスキルの育成>
障害の特性や身体各部の状態について理解し、それらが及ぼす生活上の困難や補助機器を用いる際の留意点等について理解を深め、 状況に応じて、自己の行動や感情を調整したり、他者に対して主体的に働きかけたりしてより生活しやすい環境にしていくための支援をする。また、自分で何をするかアイデアを出しながら、自分の生活をマネジメントすることができるよう、こどもの意向を受け止めながら、自分で組み立ててできる行動を増やしていけるよう支援する。
引用:放課後等デイサービスガイドライン(令和6年7月)
(イ)運動・感覚
児発ガイドラインと同様
(ウ)認知・行動
児発ガイドラインと同様
(エ)言語・コミュニケーション
児発ガイドラインには
<言語の形成と活用> 具体的な事物や体験と言葉の意味を結びつけること等により、 自発的な発声を促し、体系的な言語を身につけることができるよう支援する。
と記載されていますが、
放デイガイドラインでは
<言語の形成と活用> コミュニケーションを通して、事物や現象、自己の行動等に対応した言語の概念の形成を図り、体系的な言語を身に付けることができるよう支援する。
自発的な発声ではなく、言語の概念の形成という記載に変更されています。
(オ)人間関係・社会性
〈情緒の安定〉と〈他社との関わり(人間関係)の形成〉の項目が追加
<情緒の安定>
自身の感情や気持ち、生理的な状態像に関心を持ち、その変化の 幅を安定させることに興味を持つことができるよう援助し、変化の幅が小さく安定した情緒の下で生活ができるよう支援する。
<他者との関わり(人間関係)の形成>
他者の気持ちや意図を理解し、他者からの働き掛けを受け止め、 それに応ずることや場に応じた適切な行動ができるように支援する。
さらに放デイガイドラインには本人支援において
複数組み合わせて行うことが求められる4つの基本活動が示されています。
(ア) 日常生活の充実と自立支援のための活動
こどもの発達に応じて必要となる日常生活における基本的な動作や自立を支援するための活動を行う。こどもが意欲的に関われるような遊びを通して、成功体験の積み増しを促し、自己肯定感を育めるようにする。将来の自立や地域生活を見据えた活動を行う場合には、こどもが通う学校で行われている教育活動を踏まえ、その方針や役割分担等を共有できるよう、学校と連携を図りながら支援を行う。
(イ) 多様な遊びや体験活動
遊び自体の中にこどもの発達を促す重要な要素が含まれていることから、挑戦や失敗を含め、屋内外を問わず、自由な遊びを行う。また、体験したことや、興味を持ったことに取り組めることは、新たにやってみたいと感じる機会につながることから、多様な体験の機会を提供していく。こどもが望む遊びや体験、余暇等を自分で選択しながら取り組むことができるよう、多彩な活動プログラムを用意する。その際には、個別性に配慮された環境やこどもがリラックスできる環境の中で行うことができるよう工夫することが重要である。
(ウ) 地域交流の活動
障害があるがゆえにこどもの社会生活や経験の範囲が制限されてしまわないように、地域の中にこどもの居場所をつくりながらこどもの社会経験の幅を広げていく。他の社会福祉事業や地域において放課後等に行われている多様な学習・体験・交流活動など地域資源も活かして、遊びや体験の機会を創出していくとともに、ボランティアの受入れ等により、積極的に地域との交流を図っていく。こうした取組は、こどもにとって、地域そのものが安全・安心な居場所となることにもつながる。
(エ) こどもが主体的に参画できる活動
こどもとともに活動を企画したり過ごし方のルールをつくったりするなど、こどもが主体的に参画できる機会を設け、こどもが意見を表明しやすい環境づくりを行いながら、こどもとともに活動を組み立てていく取組を行っていく。その際には、こどもの意思を受け止めつつ、一人一人の個別性に配慮するとともに、こどもに寄り添いながら進めていくことが重要である。こうした取組は、こどもにとって自分自身が権利の主体であることを実感するとともに、こどもの権利を守ることにもつながる。
引用:放課後等デイサービスガイドライン(令和6年7月)
(障害特性に応じた配慮事項)
視覚に障害のあるこどもに対して
視覚補助具やコンピューター等の情報機器等各種教材を効率的に活用することも重要
と追記されています。
(思春期のこどもに対する支援にあたっての留意点)
思春期特有の課題についての留意点が記載されています。
思春期は、行動上の課題がより顕在化しやすくなることや、メンタルヘルスの課題や不登校など様々な課題が増えてくる年代であり、また、この時期には高校卒業後の進路に向けた 準備も必要となる。ここでは、こうした様々な課題を持つ可能性のある思春期のこどもへの 支援に関して特に留意すべき内容について示す。
○ 思春期は、他者との関わりや社会との関わりの中で、自分の存在の意味や価値、役割を考え、アイデンティティを形成していく時期である。一方で、様々な葛藤を抱えたり、家族・友人との関係などに悩んだりする繊細な時期でもある。思春期のこどもが、自己肯定感を高められるよう支援を行うことが重要であり、こどもの意思を受け止めつつ、一人一人の悩みや葛藤、個別性に合わせて寄り添って支援を行っていくことが重要である。
○ 思春期は、メンタルヘルスの課題も顕在化してくる年代であり、こころの不調や病気の兆し、症状やその特徴を理解して支援を行うことも重要であり、必要に応じて、医療機関や地域の相談窓口となる機関(保健所、精神保健福祉センター等)とも連携を図りながら支援を行うことが重要である。
引用:放課後等デイサービスガイドライン(令和6年7月)
(不登校の状態にあるこどもに対する支援に当たっての留意点)
不登校の状態にあるこどもへの支援の留意点も加えて記載されています。
不登校の状態にあるこどもへの支援については、放課後等デイサービスのみだけではなく、学校等(校長、担任、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、養護教諭など) や家庭を中心に、こどもを取り巻く関係者・関係機関間で支援の状況等を適宜共有し、連携を図りながら支援を行っていくことが重要である。なお、支援にあたっては以下に留意すること。
○ 不登校の状態にあるこどもに対しては、まずはこども本人の気持ちに寄り添い、共感することで、こどもの自己肯定感を高めることが大切である。
○ 学校等や家族からの情報も踏まえてアセスメントを行い、登校しないあるいはしたくてもできない状況が生じている要因や背景について把握・分析を行い、個々のニーズに応じて必要な支援(例えば、こども本人の抱える不安の解消、社会的コミュニケーションを図るなど)を放課後等デイサービス計画に位置付けた上で、計画的に支援を進めることが重要である。また、学校等や家庭と連携を図る際には、放課後等デイサービスでの支援の状況やこども本人の変化等を共有しながら支援を進めることが重要である。
○ 不登校の状態にある場合であっても、こどもの学びの場を確保し、学びたいと思った時に学べる環境を整えることも重要である。そのため、こども本人の意思を尊重し、学校等や家庭と連携を図りながら、必要な対応や方策の検討を行うことが重要である。その際には、学校等は、様々な制度や公的な支援により質の担保された教育機関であり、学校教育を受ける機会を得られないことにより、将来にわたって社会的自立を目指す上でリスクが存在することを踏まえ、安易に不登校の状態が継続することのないよう留意することが必要である。
引用:放課後等デイサービスガイドライン(令和6年7月)
(2)家族支援
こどもが学齢期に診断を受ける場合や年齢とともにニーズが変化することもあるため、保護者がこどもを受け止めるプロセスを支えることが大切であること。そして、二次障害やメンタルヘルスの課題を抱えるケースもあるため、自尊感情や自己降雨力感を育む大切さについて記載されています。
ねらいの部分については、
アタッチメント(愛着)について児発ガイドラインは「形成」だったが、関係を継続するための支援として「安定」に変更されています。
(支援にあたっての配慮事項)
学齢期ということでこどもがメンタルヘルスの課題や不登校など様々な課題を抱える年代であること、改めて障害特性が明確化するなど、そういった課題に家族が様々な葛藤に直面する時期ということが追記されています。
家族支援について詳しい内容は⇨こちらで解説しているのでご確認ください。
(3)移行支援
改めてインクルージョンの考え方が記載されているとともに
入学・進学・就職時のライフステージの移行期における移行支援は、支援の一貫性のためにより丁寧な支援が求められています。
ねらいや支援内容は、対象が保育所等から放課後児童クラブ等へ変更になったこと以外は大きく変わっておりません。
移行支援について詳しい内容は⇨こちらで解説しているのでご確認ください。
(4)地域支援・地域連携
地域支援・地域連携についてはあらためて
・こどものライフステージに応じた切れ目のない支援(縦の連携)
・関係者間のスムーズな連携の推進(横の連携)
これらによって成り立つ縦横連携が示されています。
また、「地域支援・地域連携」はこどもや家族を対象とした支援を指すもので地域の支援体制の構築に関するものではないと留意点が記載されています。
関係機関との連携など地域支援体制構築については、第5章 関係機関との連携に示されています。
そのため支援のねらいについても
・通所するこどもに関わる地域の関係者・関係機関と連携した支援
とあくまでこどもに関わる連携となっています。
第4章 放課後等デイサービス計画の作成及び評価
1.障害児支援利用計画の作成の流れ
(3)放課後等デイサービス計画に基づく放課後等デイサービスの実施には、児発ガイドラインと同様にセルフプランにおける連携の方法として下記が記載されています。
障害児相談支援事業所が作成する障害児支援利用計画に代えてセルフプランにより放課後等デイサービスを利用するこどもであって、複数の事業所から継続的に支援を受けている場合は、市町村が選定するコア連携事業所(こどもの支援について適切なコーディネートを進める中核となる事業所)を中心として、事業所間で連携して放課後等デイサービスを実施する。
引用:放課後等デイサービスガイドライン(令和6年7月)
2.放課後等デイサービス計画の作成の流れ
計画作成についてはガイドライン別添1の個別支援計画の記載のポイントをご覧いただくとわかりやすいかと思います。
計画作成について詳しい内容は⇨こちらで解説しているのでご確認ください。
第5章 関係機関との連携
こどもを支援するうえで、関係機関との連携は欠かせません。
ポイントを下記に記載します。
▶市町村
地域のニーズや資源等を把握する。こどもと家庭に関わる部局が多いため包括的な支援のため連携体制の構築が必要。
▶医療機関
協力医療機関を定める。必要に応じて、保護者と連携しながら主治医と情報共有。医ケア児については医療的ケア児支援センターやコーディネーターと連携。
▶学校等
こどもに必要な支援のためには事業所・学校等・家庭の三社の共通理解のもとで役割分担を明確にして連携することが必要。
保護者の同意を得て、個別の教育計画と放課後等デイサービス計画、双方の情報提供を行うなど積極的な連携が大切。
教育と福祉の連携については、「地域における教育と福祉の一層の連携等の推進について」(令和6年4月25日こども家庭庁・文部科学省・厚生労働省課長通知)を参照
▶放課後児童クラブや児童館等との連携
放課後等デイサービスと放課後児童クラブ等を併行利用をしている場合は支援内容を共有するとともに、必要に応じて放課後児童クラブをパックアップすることが重要。
放課後児童クラブ等に移行する際には円滑な移行に向けた連携とフォローアップが必要。
▶児童発達支援センターとの連携
支援方法や困難事例等について合同で研修を行うことや、それぞれから助言し合う等。
地域における障害児支援ネットワークの核として児童発達支援センター主催の研修会に参加するなど、日常的な連携体制を構築。
発達障がい者支援センターや障害児入所施設との連携を進めることも必要。
▶ライフステージに応じた関係機関との連携
就学時には児童発達支援や保育所等と、就職時には就職先や障害福祉サービス事業所と積極的な連携を図り、スムーズに支援を引き継いでいくことが必要。
▶こども家庭センターや児童相談所
特に支援が必要な家庭のこどもに対して支援を行うためにも障害児施策だけでなく母子保健や子育て支援と連携して課題に対応していく
事業所を利用する子どものきょうだいがヤングケアラーの場合なども同様に関係機関と連携して支援につなげる。
▶(自立支援)協議会等や地域
(自立支援)協議会や要保護児童対策地域協議会等への積極的な参加を行い、地域支援体制を構築する。
まとめ
児童発達支援ガイドラインと同様に
・こどもが権利の主体
・ウェルビーイングの実現
・こども施策全体の理解と連続性
・エンパワメントを前提とした支援
・5領域の視点を踏まえた総合的な支援
・セルフプランによる影響
・縦横連携
・支援が必要な家庭
これらについて強く示されていますが、放デイガイドラインはそれに加え
放デイで関わるこども達は、成長発達において変化の多い時期で2次障害やメンタルヘルスの課題を抱える可能性があること、だからこそ自尊感情や自己効力感を育むことが大切といったことも示されています。
改めて多くのことが求められる放課後等デイサービスですが、目の前のこども達が健やかに育つためにガイドラインを理解して、支援の質を向上させましょう。