児童・生徒が使っている福祉サービスについてあまり知らない
学校と連携したいけど、どう連携したらいいかわからない
学校、福祉それぞれの立場で連携についてお悩みを抱えていませんか?
平成24年の児童福祉法の改正で放課後等デイサービスなどの児童福祉サービスが創設されてから、急激に事業所数も増えてきました。
その中で、双方の理解が深まっておらず協力体制が取りにくいことも多く見られました。
こうした状況を踏まえ、文部科学省と厚生労働省の両省による家庭と教育と 福祉の連携「トライアングル」プロジェクトが発足し、平成30年5月にはその報告の趣旨を踏まえた「教育と福祉の一層の連携等の推進について(通知)」が示されています。
トライアングルプロジェクトについてはこちら↓で解説しています。是非ご覧ください。
兵庫県では特別支援学校をモデルにトライアングルプロジェクト実践研究事業を展開し、兵庫県教育委員会がすべての学校で活用できる「教育・家庭・福祉の連携マニュアル~児童生徒の安心・安全と一貫した支援のためのトライアングル~」(以下 連携マニュアル)を作成しました。
この記事では、連携マニュアルについてポイントを絞って解説させていただきます。
※このマニュアルは兵庫県教育委員会が作った学校向けのマニュアルとなっています。
1.連携が必要な理由
なぜ連携が必要か、一言で言うと「障害がある子どもの持てる力を最大限に高めることにつながる」からです。
子どもを取り囲む関係機関は増えており、学校で教育を受けるだけでなく、下校後に放課後等デイサービス等を利用する子どもも多くなっています。さらには保育所等訪問支援の訪問支援員が学校に訪問して一緒に子どもについて考えることもあります。
保護者も含めこれらの関係機関がすべてバラバラの目標を持っていたらどうでしょう?
夜あまり寝ないのが心配。もっと昼間に体を動かしてほしい。
大事なことはひらがなを覚えることだ。集中して練習しよう。
この子の楽しめる余暇をもっともっと広げよう。
友達とのコミュニケーションを伸ばすことが必要だと思う。
どの視点も大事であったとしても、子どもに関わる大人達の思いがバラバラであることはベストとは言えないのではないでしょうか?
子どもの「今」と「将来」について関係機関が話し合い、方向性を合わせ、役割を明確にして支援していくことが子どもの可能性を広げることにつながります。
2.福祉サービスの種類
児童期に関わる代表的な障害児サービスは上記のとおりです。
上記以外にも一時お預かりの日中一時支援や、生活全般を支援する障害児入所施設などもありますが、今回は割愛させていただきます。
放課後等デイサービスは数も増えており、それに伴って事業所ごとのサービス提供時間やサービス内容も幅広くなっています。
自分たちの地域にある事業所について理解を深めていくことも大切です。
放課後等デイサービスについてはこちら↓で解説していますのでご覧ください。仕事として考えている方に向けてへの記事ですが、放デイについてのイメージをつかんでいただけるかと思います。
学校との密な連携が必要な保育所等訪問支援についてはこちら↓で詳しく解説しています。こちらもぜひご覧ください。
連携をするための第一歩は相互理解です。お互いのことを知らずに連携はできません。
3.子どもの支援に関する計画
障害がある子どもに対して、教育と福祉それぞれで支援計画が作成されています。
その作成に当たっては、学校と事業所が連携を取り、内容については一貫性を持たせることが求められています。
先程の連携の必要性のところでもお伝えさせていただきましたが、同じ子供を支援する計画です。
せっかく作るのであれば、それぞれの計画の方向性を合わせて、子どもの可能性を広げられる計画にしましょう。
4.連携の現状と課題
調査した伊丹市のすべての小・中学校に、放課後等デイサービスを利用する児童生徒が在籍していましたが、ケース会議等を開いて連携を取っている学校が約半分、個別の教育支援計画等についての情報共有をしている学校となると20%程となっています。
まだまだ連携が取れていない現状がわかります。
上記の表は学校から事業所へ情報を提供することに対してどう思うかを情報ごとに確認したアンケート結果です。
4つの情報の回答にほぼ差はなく、80%近くの保護者は学校から事業所に情報を提供してほしいと考えていることがわかります。
学校や事業所として個人情報の取り扱いは慎重に行う必要がありますが、個人情報を丁寧に取り扱いすぎることで、必要な連携が取れていないとも言えます。
保護者の意思を確認しながら、情報をうまく共有することが連携には欠かせません。
アンケートの中で、送迎や連携に対して困っていることが学校・特別支援学校・保護者・事業所それぞれの立場から挙がっています。
身近な地域でも聞いたことのある「あるある」な話だと思います。
これらの困りごとについても、大きな仕組みを変えなければ解決できないこともあるかもしれませんが、ほんの少しの工夫で解決できることもありそうですよね?
5.市町教育委員会の役割
連携マニュアルの中で、以下の3点を具体的な役割として挙げています。
① 市町の実情に応じたマニュアルの作成と様式例の活用(実情に応じた必要な調整等を加えて配布・周知)
② 福祉部局との連携 (定期的な放デイ等連携会議の開催)
③ 学校への支援 (各学校が事業所と主体的な連携を図れるように支援)
上記の具体的な取り組みは必要ですが、最も大切なことは教育委員会としての方針と役割を明確にすることです。
各市町教育委員会は、連携にかかる兵庫県の方針「安心・安全性」、「一貫性」「合理性」 に基づき、市町等の実情に応じた実効性のある取組を推進していくことができるよう、福 祉との連携に関する体制等を整える役割を担う。
引用: 教育・家庭・福祉の連携マニュアル~児童生徒の安心・安全と一貫した支援のためのトライアングル~
連携マニュアルの中では上記のように明記されています。
自分たちの地域で目指すべきものと役割を言語化しましょう。
6.連携に向けた学校の準備
・連絡窓口の設定
・送迎や情報共有のルール確認
・様式の作成(連絡等を行うための文書の様式作成)
・確認事項の情報共有(どういった情報をどういった形で共有するか等)
主にこれらの準備が必要となります。
放デイや保育所等訪問等、サービスによって多少連携の方法も変わります。
まずは、窓口を設定して情報の伝達や検討をスムーズにすることが必要です。
7.学校と福祉の連絡の流れ
上記は連携マニュアルの中で示されている手続きや連絡の流れになります。
子どもがどのサービスを使うかによって矢印が色分けされています。詳しい内容は連携マニュアルをご覧いただければと思いますが、福祉サービスを利用する際の連携の流れとして全体のイメージはつかんでいただけると思います。
初めて福祉と連携する際には、こういった流れもわからず事業所とどのようにやり取りをしていいか迷うこともあります。
福祉も学校も双方が基本的な流れを押さえておいていただくことで最初の連携がスムーズに進みます。
最初に躓いてしまうとその後の連携が困難になることも多いので、基本的な流れはしっかりと押さえておきましょう。
8.まとめ
教育・家庭・福祉の連携マニュアルについて解説させていただきました。
障害がある子どもの持てる力を最大限に高めることにつながる連携は、多職種が関わる子どもの支援では欠かせないものです。
連携の重要性を改めて理解していただき、子どもを取りかこむ大人が自然に手を取り合う社会に近づくことを願っています。