平成30年度から「身体拘束廃止未実施減算」ができて、事業所としてはさらなる身体拘束廃止に向けた取り組みが求められていますが、
実際に減算された事業所はあるの?
身体拘束はどのくらい行われているの?
こういった疑問について、厚労省で行われた調査から見てみましょう。
今回は「身体拘束廃止未実施減算」の効果等について今後の在り方を検討するための資料作成を目的にした、「厚生労働省 令和元年度障害者総合福祉推進事業障害福祉サービス事業所等における身体拘束等に関する実態調査」の報告書(令和2年3月)からPOINTを絞って解説させていただきます。
身体拘束廃止未実施減算の適用状況
国保連の報酬請求実績データからみた身体拘束廃止未実施減算が適用されている事業所数は上記の表のようになっています。
全事業所67,065のうち、減算が算定されているのは81事業所。
0.12%とだいたい1,000事業所の中で1事業所が減算適応されているくらいの比率になっています。
身体拘束の対応方針
事業所にアンケートを取った結果、身体拘束を一切行わないと言う方針を決めている事業所が半分以上という回答でした。
また身体拘束を行う事があるという回答をした事業所についてもガイドラインやマニュアルの整備状況を確認すると、上記のように身体拘束の判断基準や手続きの方法など明確に定めている事業所も多く見られています。
身体拘束の実施状況
次に実際に行われた身体拘束はどういったものが多いのかを見ていきましょう。
このアンケートは令和元年10月25日〜10月31日の一週間で身体拘束を実施した実人数について確認して、その内容についてグラフ化されたものです。
全体で見ると最も多いのは「車イスやイスから落ちたり立ち上がったりしないように、拘束帯やベルトを付ける」で、次に多いのは「自分で降りられないようにベッドを柵で囲む」といった状況でした。
これらの状況が上位にあるということで、支援の手が足りないために行動を制限している側面も考えられます。
身体拘束の状況を強度行動障害を有する児者にフォーカスしてみてみると上記のグラフのとおりです。
一番多いのが「他害を一時的に職員の体で制止する」となっており、次に「居室に隔離」と「飛び出さないように職員の体で制止する」となっています。
強い行動障害からくる他害等から本人や他の方の安全を守るためという目的が主となっています。
身体拘束を廃止する場合に課題に感じること
身体拘束を廃止する場合を考えた時に課題として挙がったのは「本人や他の利用者を事故から守る安全対策として、身体拘束以外に方法のない場合がある」という内容であり、様々な状況の中で障害特性への対応に困難さを感じていることも見られます。
身体拘束廃止未実施減算の効果
身体拘束廃止未実施減算の効果について事業所からの視点と、自治体からの視点の両方から見てみましょう。
事業所からの視点
事業所に身体拘束廃止未実施減算ができたことでの取り組みや意識がどう変化したかというアンケートでは「特に変化はない」が44.7%ということで半分近くは変化を感じていないとの回答でした。
しかし書式の見直しをしたり、職員が身体拘束廃止への関心を持つきっかけになったという変化も一部では見られました。
自治体からの視点
事業所からの視点ではあまり変化がない印象でしたが、自治体からの視点ではいかがでしょうか。
自治体としては「身体拘束廃止未実施減算」創設による効果を60%以上が感じているようです。
効果を感じた要因としては、身体拘束廃止未実施減算が創設されたことで、約3割の事業所が意識が高まっていると感じているようです。
具体的に意識の高さを感じた変化の多くは、事業所からの問い合わせが増えたということでした。
身体拘束についてきちんと考えるきっかけになった事業所が多いと実感したようですね。
令和4年度から義務化
今回解説させていただいた調査は令和元年度のものでしたが、令和4年度からは障害者虐待防止と身体拘束適正化推進のための取り組みが義務化となります。
身体拘束の実際や、身体拘束廃止未実施減算ができてからどういった効果があるかを調査内容から解説させていただきましたが、
事業所として虐待を防止するために、適切な支援を行うために組織的な取り組みが必要です。
組織的な取り組みなくしては、スタッフ一人ひとりの意識の向上はありえません。
その方にあった支援に必要なものは何か?ということをしっかりとチームで検討し、適切な支援につなげていただければと思います。
障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引きについては↓こちらを御覧ください。
やむを得ず身体拘束を行う場合の要件や流れについては↓こちらを御覧ください。
障害者虐待の実態を知りたい方は↓こちらをご覧ください。