ヤングケアラーという言葉を御存じでしょうか?いつの間にか、子どもの権利が侵害されていることもあり得ます。ヤングケアラーについて僕の意見を交えながらわかりやすく解説していきたいと思います。
1.ヤングケアラーとは
法令上の定義はありませんが、一般に、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている18歳以下の子どもとされています。
家庭状況によって異なりますが、家族が障害や病気などで介助や見守りが必要な状態で、
家事(買い物・料理・洗濯)
ケア(着替えや移動の手伝い)
情緒面のサポート(話を聞いたり、慰める等)
労働(家計を支えるためのアルバイト)
などなどを担っている子どもたちを指します。
2.ヤングケアラーの課題
どの家庭でも家庭内でのそれぞれの役割があり、子どもが家事や家族の世話等の一部を担うこともあると思います。
しかし、その役割の負担が過度であったり、長期にわたっていたり、あまりに早い時期から役割を担うといった場合、人間関係や勉強、進路などにも制限がでて、その制限がこどもの成長や発達に影響を及ぼすことも考えられ、子どもとしての権利が守られない状態になってしまうこともあります。
お世話などで睡眠時間が少なくなって、日中の勉強に集中できなくなったりすることもあります。
3.ヤングケアラーの現状
令和3年3月に行われたヤングケアラーの実態に関する研究 報告書 (murc.jp) によると、
学校におけるアンケート調査やヒアリングの結果から、ヤングケアラーの概念を知っている学校は約6割。
ヤングケアラーと思われる子どもがいる学校は
「中学校」で46.4%
「全日制高校」で49.8%
「定時制高校」では70.4%
「通信制高校」では60.0%
となっており、定時制高校や通信制高校では割合が高くなっています。
ヤングケアラーと思われる子どもの状況については中学校では「きょうだいの世話」「家事」を行っている割合が高く、全日制・定時制・通信制高校では「きょうだいの世話」「家計を支えるためのアルバイト」の割合が高くなっています。
4.ヤングケアラーの対応の難しさ
a.表面化しにくい
ヤングケアラーは表面化しにくいです。それは、子どもが育ってきた環境で家族のお世話や多くの家事を行うことが当たり前と捉えて、その負担に疑問を持つことなく過ごしてしまうこともあります。お世話が必要な人がいるのに、大変とかやりたくないと感じるのは「悪い子」と思い込んでしまうかもしれません。
また、家庭での家事やお世話で負担と感じていても、障害を持っていたり、介護が必要な家族がいることを知られたくないという想いから、身近な人に相談することもためらってしまうことも多いのではないでしょうか。
友達や先生の立場では、学校などで子どもの様子が少しおかしいと感じていたとしても、家庭のこととなると「相手が嫌がってしまうかも」という考えが生まれ、踏み込みにくさもあります。
b.認知度が低い
ヤングケアラーや子どもの権利について、子ども自身も社会的にもまだまだ認知度が低いという側面もあります。権利を守るためには、守られる側も守る側も権利について理解することが必要です。子ども自身が自分の権利を理解して、それを訴えられるようになると同時に、どうしても弱い立場である子どもが権利を奪われないよう、周りの大人が理解を深めていく必要があります。
c.支援先が幅広い
ヤングケアラーの背景には様々な要因があります。障害や介護、病気、貧困、もしくはそれらが複雑に組み合わさっています。様々な要因に対して支援をする先が幅広く、どこかに相談すればすべてが解決するということが難しいことも多く、相談がしにくいということもあります。
5.子どもの権利を守り、健やかに成長できるように
ヤングケアラーについて知ったことで、実は自分の子ども時代も今考えるとヤングケアラーだったと感じる方もいるのではないでしょうか?
福祉の分野でも、障害を持った方の支援の一部を担ったり、障害を持った方がきょうだいに居ることで友達とのつながりで劣等感を感じてしまったりすることもあるため、きょうだいも支援の対象と考えられてきました。
社会的に隣人等との関係性も希薄になっている中で、子どもに関わる大人が、寄り添い、変化に気付き、相談しやすい関係性を作ることはとても重要です。
子どもの権利を守るために、ヤングケアラーの正しい知識の広がりを期待します。
令和3年6月に神戸市に開設した、ヤングケアラー専用相談窓口(神戸市:こども・若者ケアラーへの相談・支援 (kobe.lg.jp))のように、公的な支援の広がりも期待します。
おすすめ書籍
ヤングケアラーの実態を知る、当事者の思いを知るにはピッタリの本です↓。ぜひご覧ください。
こちら↓の記事では子ども家庭局が立ち上げた「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」についてわかりやすく解説しています。
厚労省令和3年度子ども・子育て支援推進調査研究事業をうけ有限責任監査法人トーマツが「他機関連携によるヤングケアラーへの支援の在り方に関する調査研究」を実施しました。この事業の中で、「多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援マニュアル~ケアを担う子供を地域で支えるために~」(以下 マニュアル)が作成されました。支援のポイントや支援の基盤づくりが記載されています。
是非こちら↓記事でマニュアルのポイントを押さえていただき、支援の必要性や支援方法についてもご理解いただければと思います。